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2013.11.08
[イベントレポート]
「笑える時もあれば悲しい時もある。それが人生です」-10/21(月)コンペティション『ブラインド・デート』: Q&A

Blind Dates

©2013 TIFF

 
10/21(月)コンペティション『ブラインド・デート』: Q&A
 
登壇者:レヴァン・コグアシュビリ(監督/脚本/編集/プロデューサー)、アンドロ・サクヴァレリゼ(俳優)、オレナ・イェロショヴァ(プロデューサー)、スリコ・ツルキゼ(プロデューサー)
 
40代独身のサンドロは冴えない日々をおくっているが、ある日人妻マナナと出会い、惚れてしまったことから、思いがけない人生に巻き込まれる……。7月に開かれた第48回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で、製作中の作品に与えられるWork in Progress賞受賞。9月のトロント国際映画祭2013 でワールド・プレミア上映された話題のトラジコメディ(悲喜劇)。
40歳の監督はロシアとアメリカで映画を学び、2作目となる本作で、世界の注目を集める存在に駆け上がった。劇中、一度もニコリとしない主演のサクヴァレリゼさんが登壇すると、もうそれだけで場内から笑いが沸き起こり、観客の作品への共感が伝わってきた。
 
矢田部PD:ようこそ、東京へいらっしゃいました。この作品で、私たちはグルジア映画のすばらしさを発見しました。皆さんは昨日、東京に着いたばかりでいらっしゃいます。監督からまず、ご挨拶の言葉をお願いします。
 
レヴァン・コグアシュビリ監督(以下、コグアシュビリ監督):映画を観てQ&Aまで残ってくださり、ありがとうございます。東京国際映画祭にご招待いただき誠に光栄です。日本の文化や映画は、私に大きな影響を与えています。フィルムメーカーを目指したのも、日本映画のおかげと言っていいくらいです。ありがとうございます。
Blind Dates

©2013 TIFF

 
矢田部PD:そしていま、スクリーンから抜け出てきたようなアンドロさん、こうしてお姿を拝見できるだけでも感動しています。
 
アンドロ・サクヴァレリゼさん(以下、サクヴァレリゼさん):今ここにいることを、とても幸せに感じています。初めての日本で、これが最後にならなければいいと願っています(笑)
Blind Dates

©2013 TIFF

 
矢田部PD:続いて、プロデューサーのお二人にもひと言お願いいたします。
 
オレナ・イェロショヴァさん(以下、イェロショヴァさん):ご招待をうれしく思い、感謝しています。まだ完成していない時期に、カルロヴィ・ヴァリの審査員のひとりだった船戸慶子さんが、「これは日本人にも共感できる作品ね」と言ってくださいました。そのとおりになることを願っています(笑)。ワールド・プレミアをトロント国際映画祭、アジアン・プレミアをこの素晴らしい東京国際映画祭で行うことができて、ほんとに幸せです。
Blind Dates

©2013 TIFF

 
スリコ・ツルキゼさん(以下、ツルキゼさん):観客の皆さん、東京国際映画祭の関係者の皆さんに、心から感謝申し上げます。
Blind Dates

©2013 TIFF

 
矢田部PD:40歳の独身男性を主役に、映画を作ろうと思った理由はなんでしょう?
 
コグアシュビリ監督:前作『ストリート・デイズ』(2010・日本未公開)がドラッグ中毒者のヘビーな話だったので、今回は、もう少しポジティブで軽快な内容にしたいと考えました。人間関係を通じて、グルジア社会が垣間見られるストーリーにしたいと。そんな時、独身の友人に、親から熱心に見合い話を勧められて困ったという話を聞きました。それは面白いと思ったのがきっかけです。
 
――素敵な映画をありがとうございました。最初はどこで笑っていいか戸惑いましたが、段々楽しくなってきて、最後は夢中で拝見しました(笑)。グルジア人と日本人では笑いのツボが違うかもしれないのでお尋ねしますが、監督とアンドロさんが面白いと思うポイントを教えてください。
 
コグアシュビリ監督:いま観客席で一緒に映画を観ていましたが、グルジア人と笑う場面は同じでした。だから感覚的には似ているようですね。ただし、この作品は完全なコメディではありません。最初はコメディにするつもりでしたが、途中でその計画を捨て、人生についての映画を作ることにしたのです。笑える時もあれば悲しい時もある。それが人生です(笑)
 
サクヴァレリゼさん:確かにコミカルな面もありますが、意図したわけではありません。日本人とグルジア人の反応はほぼ共通していて、同じ場面で笑っていました(笑)
 
――とても楽しい、心に残る映画をありがとうございました。全体的に、重苦しい雰囲気の中でユーモアがちりばめられていて感心しました。タイトルについてお尋ねしますが、「ブラインド・デート」というのは、友だちの紹介で知らない相手と会うことですよね。途中、目の不自由な女性が登場して、別の意味も含まれているのかと思いましたが?
 
コグアシュビリ監督:おっしゃるとおりで、知らない人間同士が出会うデートという意味で使っています。目の不自由な女性が登場するのは偶然の産物です。ある日、ブラインド・デートに行った友だちから、本当に見えない女の子を紹介されて困惑したという話を聞いたのです。そんなこともあるんだと興味が湧いて、脚本家と相談して、あの場面を組み込んだのです。なので、この挿話とタイトルとはあまり関係はありません(苦笑)
 
――主人公サンドロは意志がはっきりせず、周囲に流されていくタイプです。同じような男性は日本にも多く、「草食系」と呼ばれています。グルジアでは典型的な存在なのですか?
 
コグアシュビリ監督:サンドロは典型的なグルジア人男性とは違います。草食系と言えるほどヤサ男ではありません(笑)。一見、受け身で流されているようですが、自分なりのルールを持っていて、実現したいことも明確です。誰に対してであれ、なるべく正直でありたい。その上で関係を築こうとしている部分に、彼の意志が表れています。
 
――アンドロさんは役に入り込むのは楽でしたか? 監督はアンドロさんを役に入り込ませるのは楽でしたか?
 
サクヴァレリゼさん:それほど大変ではありませんでした。というのは多分、私とサンドロは似たところがある。だから監督は私を選んだわけです。全く同じではありませんが、いくつか似たところがあるので、役に入り込むのは難しくはありませんでした。
 
コグアシュビリ監督:実はアンドロは俳優ではなく脚本家なんです。この映画の影の脚本家のひとりでもある(笑)。彼にとって、映画に出て演技をするのは、今回がはじめてでした。
私が彼を選んだ理由のひとつに、スクリーンに面白いキャラクターを出したいということがありました。実際の人生経験が垣間見える人物がいい。高貴さや威厳が体現できて、なおかつ、人間味とか脆さを醸し出せる人を求めていたのです。アンドロなら役にぴったりでした。最初は断られましたが、説得してビデオ・テストをやることになりました。そうしたら思ったとおりの出来で、「できるじゃないか」と言って演じてもらったのです。
 
――驚いたことに、日本の感覚ととてもよく似ていると思いました。監督は先ほど、日本の文化や映画に大きな影響を受けたと仰いましたが、どんなものに影響を受けたのでしょう。
 
コグアシュビリ監督:最初に黒澤明の影響を受けました。子どもの頃、それほど映画通ではなかった10歳の頃に『羅生門』を観て、わからないながらも凄く強烈なものを観た印象を持ちました。大人になり意識して映画を観るようになって、黒澤もさることながら、小津安二郎が大好きになりました。その後、溝口健二や市川崑などの作品も観ています。数えればキリがありません(笑)
映画以外にも、俳句や短歌に興味がありますし、芥川龍之介をはじめとする作家にも興味があります。私の妻は建築家ですが日本の建築に大変魅了されております。日本人の伝統を守る姿勢にも感心しています。こんなふうに、いろんな興味が混ざって日本への共感を抱いています。
 
矢田部PD:確かに、侘び寂びを感じさせる作品でした(笑)。日本人の感覚にフィットするセンスが多分にあります。
 
コグアシュビリ監督:ありがとうございます(笑)
 
――グルジアというと、オタール・イオセリアーニ監督が日本でも紹介されています。イオセリアーニ監督の作品では音楽が重要な役割を果たしていますが、本作でも音楽が重要な要素のひとつとなっています。葬式の場面でグルジア民謡らしき歌が流れますが、あんなふうにグルジア人はすぐ歌えるのですか。
 
コグアシュビリ監督:イオセリアーニ監督には私も大きな影響を受けています。前作を作った時には、作品について議論する光栄な機会に恵まれました。本作はまだご覧いただいておりませんが、私は彼から多くのことを学んでいます。
あの場面に使ったのはグルジアのチャント(詠唱歌)です。グルジア人はとても音楽好きで、いつも歌っています。これは私個人を除けばのハナシですが(苦笑)。ほとんどの人は歌うのが好きで、何か機会があれば歌い出します。酔っては歌い、恋に落ちては歌い、宗教的な場面でも歌う。グルジアというよりもバルト文化のひとつなんです。
 
――ワンシーン、ワンシーンが絵画みたいで素敵でしたが、皆さんの好きなシーンを教えてください。
 
コグアシュビリ監督:海辺のカフェの場面と2度目のホテルのデートの場面です。悲しいけどおかしい。おかしな悲しさがあるというのが好きです。これは私がふだん大切にしていることでもあります。
 
サクヴァレリゼさん:最後の、女の子と抱き合っている場面が一番好きです。もう1つは、屋外のカフェにいたら雨が降ってきて、ビニール・カバーを被る場面。ポスターにもなっています。
 
イェロショヴァさん:私は全部好きですが、特に両親との場面が好きです。グルジア人的な絆が見えると思いました。両親は年老いていくことと、息子がいまだに独身でいることに、困惑と痛みを感じています。そのことがユーモラスに描かれています。あと、窓辺から通りに立っている息子を見つめる場面。「息子は明らかに問題がある」と語るところがほんとに好きで、グルジア的な強固な絆がよく表れていると思います(笑)
 
矢田部PD:お言葉を返すようですが、あれは完全に日本でも通用する場面です(場内笑)
 
ツルキゼさん:私も全部が好きですが、特にサンドロと父親が会話する場面や、サンドロと友人のイヴァの場面が一番好きです。
 
◎Q&A終了後には即席のサイン会も行われました!
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