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2013.11.01
[インタビュー]
「昔気質の人間が現代で生きるとしたらどうなるのか? それを浮き彫りにしたかった。」―コンペティション 『ブラインド・デート』レヴァン・コグアシュビリ(監督/脚本/編集/プロデューサー)、 アンドロ・アクヴァレリゼ(俳優):公式インタビュー

ブラインド・デート

©2013 TIFF

 
公式インタビュー コンペティション 『ブラインド・デート
 
―レヴァン・コグアシュビリ(監督/脚本/編集/プロデューサー)、アンドロ・アクヴァレリゼ(俳優)
 
中年の独身男がインターネット・デートで知り合った人妻に魅了されて、思わぬ厄介事に巻き込まれていく姿を描いた『ブラインド・デート』。そのユーモラスな語り口で現代のグルジア事情を浮き彫りにしたレヴァン・コグアシュビリ監督と、主演のアンドロ・サクヴァレリゼさんにお話を伺いました。
 

――40歳を過ぎてもインターネット・デートを重ねる、まるでティーンエイジャーのような凸凹コンビ=サンドロとイヴァ。その片割れの男サンドロを主人公にした映画を作ろうとした動機は?
 
レヴァン・コグアシュビリ監督(以下、コグアシュビリ監督):前作の“Street Days(Quchis Dgeebi)”も主人公は同じ40歳代の男でした。でも、彼は麻薬常習者で警官たちにそそのかされて子供を誘拐してしまう。やがて彼は追いつめられて、最終的に道徳的な選択をするか、それともしないのかというピンチに立たされる。そういうとても重くて暗いテーマでした。それなので、次の作品はもっと明るいイメージのものを作ろうと思っていました。そんな時に私の独身の友人が、「両親や親戚がいろんな女性を紹介してきて困るんだ」という話を聞いておもしろいと思ったので、それを物語の軸にしながらグルジア社会の現実を描き出すことにしたのです。
ブラインド・デート

©2013 TIFF

 

――凸凹コンビのちょっと間抜けな言動や、好きになった女性の夫の言いなりになってしまうというサンドロの底抜けにお人好しなところなど、随所にちょっとした笑いがちりばめられていますね。
 
コグアシュビリ監督:私としては、物語を語る際にはユーモアを交えないとうまくいかないと思っています。ユーモアを利用して、実際の生活や厳しい現実を浮き彫りにする。それがいちばん大事なことだと思っています。

 
――まったく笑わない主人公サンドロですが、実は奥には豊かな感受性と優しさが秘められているように感じました。演じるうえでどんな男だと解釈しましたか?
 
アンドロ・サクヴァレリゼ(以下・アンドロ):意図的に、サンドロは現代から外れている者として演じたかったのです。私たちの親の世代とか、さらに上の世代の人間は誠実で、真心を持っている人が多かった。そういう昔気質の人間が現代で生きるとしたらどうなるだろう? そういうことを監督も私も浮き彫りにしたかったのです。まず、サンドロはすべての人間に誠実であろうとしているだけなのです。それが友人であろうと、好きな女性の夫であろうと。さらに彼は、何かを物理的に奪おうとか奪還しようという精神は持っていない。とにかく、誠実に生きるだけなのです。
 

――目の前にいらっしゃるアンドロさんは寡黙で笑わずまさにサンドロそのものという印象ですが、キャスティングはどのように?
 
コグアシュビリ監督:アンドロは僕の子供の頃からの友人です。彼はもともとあれこれ考える性格で、その思慮深さが顔に表れている。とにかく私にとってはとても興味深い人間なので選びました。とはいえ実際に撮影してみないとわからないので、カメラ・テストをしてからやっぱり彼しかいないと決めました。
 
アンドロ:私は最初は拒否していたのですが。でも、とりあえずカメラ・テストをすることだけを説得されて。撮り終わった後は、監督が私を気に入らないことを祈っていたのですが結局は出演が決まってしまった。でも、撮影現場の雰囲気はとても温かくて居心地が良かったです。監督も役者に気をつかってくれたし。台詞や動きも基本的なことだけを決めて、あとは大きな自由を与えてくれたのでやりやすかったですね。
 

――最初に出演を拒否したのはなぜですか?
 
アンドロ:たぶんうまくいかないんじゃないかと、思っていましたから…。
 
コグアシュビリ監督:彼はとても恥ずかしがり屋です。でも、恥ずかしがり屋であると同時に、時にそうでもないところもある。複雑な男なんですよ(笑)。
 
アンドロ:(顔を赤く染めて、しきりに照れ笑い)
ブラインド・デート

©2013 TIFF

 
――サンドロとイヴァが毎週のようにインターネット・デートで女性と知り合いそのままホテルに直行しますが、いまのグルジアでは普通なのですか?
 
コグアシュビリ監督:私も最初は知らなかったので、インターネット・デートはサプライズでした。でもいろいろリサーチしたところ、実際にそういうことがあるのです。
 

――淡い黄色とブルーを基調にした映像に、時に哀愁、時に温もりが感じられて美しいと思いました。特に、海辺の観覧車のシーンはポストカードのように美しかったです。
 
コグアシュビリ監督:最初から,緑、青、薄いグレー、それに黄色を加えた色調を考えていました。日本の方から色彩設計を褒めていただけるととても嬉しいです。多分、日本人は世界のなかでもとくに色彩感覚に優れているのではないでしょうか。
 

――最後にサンドロは、自分とは違う男性の子供を妊娠している若い女性と結婚するのでしょうか?
 
コグアシュビリ監督:最初のシナリオでは、それもひとつの選択肢として書きました。でも最終的な映画のなかでは、そこは開かれている。結論は出していません。観る方の自由な想像にお任せします(笑)。
ブラインド・デート
 
取材/構成:金子裕子(日本映画ペンクラブ)
 
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