Home > ニュース > 「青春というのは、それを失った人が感じ、味わうものではないかと思います」-10/23(水)ワールド・フォーカス『So Young』:QA
ニュース一覧へ 前のページへ戻る
2013.11.01
[イベントレポート]
「青春というのは、それを失った人が感じ、味わうものではないかと思います」-10/23(水)ワールド・フォーカス『So Young』:QA

so_young

©2013 TIFF

 
10/23(水)、ワールド・フォーカス部門『So Young』の上映後、ヴィッキー・チャオ監督が登壇し、Q&Aが行われました。
 
ヴィッキー・チャオ監督:日本の観客は本当に礼儀正しいですね(笑)。
本当にありがとうございます。たぶん、みなさんは映画がまずお好きなのと、私に対する好奇心で、せっかくのお休みの時間を犠牲にして観に来てくださったのだと思いますが、心からお礼を申し上げます。
 
石坂PD:監督という仕事はずっとやりたかったのですか?また、今回の作品に監督は出演していらっしゃらないですが、その辺はどうお考えでしたか?
 
ヴィッキー・チャオ監督:(日本語で)はい。
私はちょっともう初恋を演じる年ではないので、自分で自分の映画を台無しにしたくないと思いました。この作品は青春と、そして最後には悲しみを描いています。特に青春というのが一番大事な要素ですので、非常に美しいものはやはりそれにふさわしく美しい、その気質のある人たちに演じてもらいたかった。もちろん私も、大人になるプロセスや、幸せな気持ちなど、青春時代を経験していますけれど、やはり自分の創作を大事にしたいので、本当の意味で青春を演じられる人たちに演じてもらいたいと思いました。
 
石坂PD:最新情報によれば、この映画は上映されてから大ヒットになっていまして、歴代の映画の売り上げベスト5にもうランクインしているそうです。ヒットの理由を、監督自身はどのように分析なさっていますか?
 
ヴィッキー・チャオ監督:その質問については、中国人向けと外国人向けでは別々の答えになりますね。中国人に対してはこうです。中国の庶民はこの20年間、豊かになること、よりよい仕事に就くこと、いい家を所有することを求めてきました。その一方で、なおざりにされてきたのは愛情や青春です。ですから、たぶんこの映画は、人生の目標や生活にはあまり意味がないけれども、これでよいのだろうかと自らを振り返って考えるような機会を中国の人に対して提供したのではないでしょうか。物質面から見れば、青春や愛というものはたいしたことではありません。けれど、あなたの人生にとっては大事なものではないでしょうか、と。中国の観客はこの映画を見て、自分の青春、初恋、愛情などを思い出して心がもろくなったのではないかと思います。一方、外国の方はこの映画についてまったく違う感想を持たれるでしょうから、ぜひみなさんがどのようにご覧になったかを知りたいと思います。
so_young2

©2013 TIFF

 
Q:この作品の後半は青春以降の話ですが、監督ご自身はどのようにとらえていらっしゃるのでしょうか。
 
ヴィッキー・チャオ監督:中国語のオリジナルタイトルは「青春に捧げる」ですが、青春時代ただ中の人たちだけに見てもらうために撮ったわけではありません。「青春」というのは、今まさに青春の人というよりは、むしろ青春をもう失った人が感じる、味わうものではないかと思うからです。中国国内でも、若い観客は「前半は好きだけどどうも後半はあまり好きじゃない。残酷で苦い」と言っていました。おそらく青春を失った人、あるいは青春を手にできない人が観ると後半部分の意義が理解できるのではないでしょうか。もちろん、私自身まだまだ青春の延長線上にいたり、幼稚な部分もあったりしますので、脚本家や編集など、私より年上のスタッフにはよくサポートしてもらいました。特に脚本家には助けられました。編集している過程で、ずいぶん暗い、重いと感じたところがありましたが、そこはあえてカットせずに残しました。特に後半部分は、何年かしてからまた観たくなるのではと思います。
 
Q:私は外国に来て15年になる中国人ですが、監督のことは20年前から知っています。
 
ヴィッキー・チャオ監督:私の年齢をばらさないでね(会場笑い)
 
Q:私の中では、監督はシャオイエンズ(監督の女優デビュー作で、主演の大ヒットドラマで演じたお姫様役の役名)のイメージでしたが、このように深い内容の映画を観てぜひお聞きしたいのは、例えば5年以内にまったく別の題材の映画を撮って出演されることはお考えでしょうか?例えば戦争映画とか。
 
ヴィッキー・チャオ監督:あの、私のことを知らなかったという人がもしいらっしゃいましたら、手を挙げていただけますか。(会場、誰も手を挙げない)みなさん私のことを知っていて、私の監督作を観に来てくださったのですね(笑)。私は、みなさんが映画ファンで足を運んでくださったのだと思いました。だから、本当に私のことを知らずに来てくれた人がいたらすごいと思ったのですけれども。私は確かに中国で一時、大変有名になった役者です。これからも有名な役者でいたいと思っています(会場笑い)。次の映画には、私は役者として出ます。また次に私が監督する作品は、今質問してくださったようにまったく違う題材、内容の映画になるでしょう。本当に、3年から5年以内に作りたいと思っています。
 
石坂PD:お楽しみに、ということですね。この作品は卒業制作ですよね。ということは、採点され、成績をつけられたのでしょうか。
 
ヴィッキー・チャオ監督:本当に先生たちは見る目があって、未完成の段階で見ていただいたにもかかわらず、99点をいただきました。もちろんその99点といのは、日本や中国の大監督たちの作品と比べて99点ということではなく、学生の卒業作品としての99点です。それでも99点をつけていただいたことに感謝しています。
 
Q:とても面白く拝見しました。先ほどのエピソードとも重なるかもしれませんが、監督と女優業を並行する形になると思います。その苦労話や製作するにあたってのスタンスの違いがもしあれば教えてください。
 
ヴィッキー・チャオ監督:どちらもすごくエネルギーのいる仕事です。私はとにかく監督をすることと役者をすること以外にろくに趣味がないのです。ショッピングは別として(笑)。役者と監督の違いですが、別に役者が監督よりも難しいわけではないけれど、役者はやはり精神力や素養の点で、監督よりももっともっと高いものを必要とする部分があると思っています。例えば多くのスタッフが撮影のためにしっかり準備して、役者が来るのを待っているのですが、そこで役者の演技がだめだとこれだけのたくさんの人の仕事が全部無駄になってしまう。また、役者をバカにするというか見下すと思います。そういう意味で、役者は大変なプレッシャーにさらされます。精神的に大人になり強くなければできません。次に監督業に関しては、豊富な知識を必要とします。人生や生活に対して、豊かでこまやかな観察力をもっていないといけません。そして、判断力を要する仕事でもあります。何が良いもので、意義があるのか、何が時間の浪費にすぎないのかといったことをしっかり見極められるように。また、審美眼は必須で、それが映画の芸術性を決定すると思っています。
 
石坂PD:監督は俳優でもあり、お母さんにもなられたのですよね?
 
ヴィッキー・チャオ監督:私は仕事と私生活をはっきり分けています。女優をしているときは少女でいますし、逆に監督でいるときは、成熟した年寄りでいたいのです。
 
石坂PD:またヤボな質問をしてしまって、すみません。
 
ヴィッキー・チャオ監督:(日本語で)かわいいねえ。
誠実な質問ですから、心からお答えします。
 
Q:とても心に残る作品でした。特に興味をひかれたのが、「人は誰でも、自分のことしか愛せない。自分が1番大事なんだよ」という言葉です。自分も、人のことをすぐ愛せるのか考えてしまうので。そのあたりをお聞かせいただけますか。
 

ヴィッキー・チャオ監督:そのセリフの通りではありません。どうか、彼から学ばないでください。男の主人公は最後に、自分の言葉を否定するわけですから。自分しか愛せないとしたら、失うものも多いでしょう。
 
Q:とても面白かったです。監督が先ほどおっしゃっていたように、主人公の女性たちが積極的にぐいぐい行く姿にすごいな、私にはそこまでできないな、と感じました。私は今大学生ですが、青春映画といえば高校時代というイメージが強かったのです。大学時代をこの作品のテーマに選んだ理由を教えていただけますか?
 
ヴィッキー・チャオ監督:中国の検閲制度はかなり厳しく、高校生の恋愛ものはあまり許されません。大学時代になると、自分でしたいことができるし、自由な空間も提供されます。一方、もう大人ですから、自分自身でいろいろな問題を解決していかなければならず、傷つきやすくもなるのです。保護者はもうほとんど関与しません。
 
Q:とてもきらきらしたものが詰まっていて、素敵な映画でした。ありがとうございます。学生時代のウェイが殺人的にかわいくて、どこか監督に似ているような気がしました。キャスティングのポイントを教えていただけますか。

 
ヴィッキー・チャオ監督:キャスティングに成功したことが、映画の成功にもつながったと思います。役者たちを選んだ基準はただ1つ、役を誰よりもよく演じられるということです。準備段階で、この年齢の主人公たちを演じられる、ほとんどすべての役者に会いました。彼らも、私が監督をすると聞いて、ぜひ参加したいと集まってくれたのです。毎日オーディションを行った私のオフィスはさながら大学の演劇科のリハーサル室のようで、何回も役者の組み合わせを変えて演技のテストをしました。映画の中のシーンを1つ、2つ演じてもらい、どんどん絞り込んでいきました。驚いたことに、4人の女優さんのうち、3人は実は歌手だったのです。さらにもう1人は、全く演技の経験がない人。ですから、演技っていったい学ぶ必要があるのだろうかと思ったくらい。とはいえ、実際の撮影時には大いに指導し、意見も言いましたよ。彼女たちにとって初めての映画出演だったので、映画の演技について教えました。
 
石坂PD:ありがとうございました。時間が来てしまいました。
 
ヴィッキー・チャオ監督:(日本語で)だいじょうぶ?
疲れましたか?(笑)。 
 
石坂PD:最後に一言お願いします。
 
ヴィッキー・チャオ監督:観客のみなさんは、すでに私をよく知っていてくださったかもしれませんが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。そして、次回来日するときも、ぜひまたみなさんにお会いしたいと思います。本当に観に来てくださってありがとうございました。(日本語で)ありがとう。
 
ワールド・フォーカス
So Young

KEIRIN.JP本映画祭は、競輪の補助を受けて開催します。TIFF History
第25回 東京国際映画祭(2012年度)