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2013.11.01
[イベントレポート]
「自分がしたいことを、道徳的な観点から縛らない方がよいのではないでしょうか」-10/20(日)ワールド・フォーカス『Together(英題)』:Q&A

together

©2013 TIFF

 
10/20(日)ワールド・フォーカス部門『Together(英題)』の上映後にQ&Aが行われ、シュイ・チャオレン監督が登壇されました。
 
シュイ・チャオレン監督(以下、監督):皆様、今日は外のすごい雨にもかかわらず来て下さりありがとうございます。日曜日にこんなにたくさんの方が映画を見に来てくださるなんて、思ってもみませんでした。この作品は、私にとって初めての長編です。皆様の色々なご意見を聞かせていただきたいと思います。
 
石坂PD:ありがとうございます。お身体を壊して、福岡にはいらっしゃらなかったというお話でしたが、もう大丈夫ですか?
 
監督:(日本語で)だいじょうぶ!
もう仕事も始めています。台湾での撮影はとても辛かったので、身体を壊してしまいました。これからもたくさん映画を撮って、来年も再来年も来られるように頑張ります。
 
石坂PD:この作品にはちょっとおかしな日本人が出演していますが、あの方はどういう役者さんですか?
 
監督:北村豊春さんという方です。私の友人で、役者でもあり映画監督でもあります。今回北村さんをキャスティングした理由のひとつに、台北には色々な民族の文化が集まっているということがあります。そのため、この作品には先住民の方の言葉も広東語の訛りも出てきます。色々な言葉を話す人が台北に集まっているという、そういった言語がミックスされた場所であることが挙げられます。この日本人の役の方はとてもいい効果を映画にもたらしてくれました。
 
Q:ほとんどの登場人物がカップルになるなか、北村さんと主人公のヤンだけがカップルにならなかったことの意図を教えていただけますか。また、ラストでヤンはどこへ向かったのでしょうか?
 
監督:北村さんが演じる役はいわゆる「負け組」の設定です。結婚することが決まっても、彼女は衝動で決めてしまったので、その熱が冷めた後、彼女は結婚に迷ってしまいます。それを表現するために、北村さんの役をそのように設定しました。
主人公についてですが、人が成長してゆく過程でたどる様々なプロセスのひとつかなと思います。ヤンの人柄は、周りの人たちを助けるうちに自分を忘れてしまうというものです。周りの人が喜んでくれるなら自分も楽しいと思う、そういう人間なのです。最後、彼の行く末は、バイクに乗って自分の新しい恋でも見つけに行ったのではないでしょうか。作中ではうまくいきませんでしたが、これから彼は新しい世界に行って、いいことを見つけるかもしれない、というイメージです。
 
石坂PD:ヤンはひたすら受身の印象を受けるキャラクターですよね。
 
監督:そう、ヤンは幼くて心が弱いのです。もう少し積極的に出ようと思いつつ、いつも受身になってしまうキャラクターです。
together2

©2013 TIFF

 
Q:中国では夫婦が離婚をするということは非常に重い出来事なので難しいと思うのですが、この作品では別れが淡々と描かれています。どのような意図あったのでしょうか?
 
監督:それは、この作品の重いテーマと非常に強い関係があります。脚本段階では、若い人や中年の人など様々な年齢のカップルを設定して、それを少年ヤンの視点から描いていきました。ヤンは不愉快なものも楽しく見ようという態度でいます。ヤンのセリフの中に、「楽しいことはそのままでいけばいいじゃないか。わざわざ悪いことのようにコソコソしなくてもいいんじゃないの?」という言葉があります。男女が別れるということは、とても辛いことではありますが、別れに際して、辛いことだけでなく良かったこと、楽しかったことも思い出してください。辛い別れであっても、ジョークで軽く流して、暖かい雰囲気で別れていく・・・。このような気持ちから、喧嘩やゴタゴタにならず平和的に別れていく描き方をしました。
 
Q:この『Together』に込めた思いとはどんなものでしょうか。この映画は何かを得るために、自分がしたいことができるかどうか、できるのであれば色々な観念や伝統的なものを捨ててでも、自分のやりたいことに向かっていくというテーマなのでしょうか。
 
監督:『Together』というタイトルを離して読むとto get herです。これはケニー・ビーが演じるビンに、子どもが言う「彼女をモノにすれば? 彼女が好きならそうした方がいいよ。」というセリフからto get her、Togetherとなりました。子どもが第三者の目でお父さんを見ているのです。楽しいこと、本当にやりたいことを求めていくこととは別に、普通はわがままに見えるかもしれませんが、自分がしたいことを求めていくことは罪ではない。この作品で私が言いたかったのは、恋など自分がしたいことを道徳的な観点から縛らない方がよいのではないだろうかということです。観客に対して示唆をするというか、決定的な答えは出したくないと考えています。
 
石坂PD:タイトルについて、お伺いいたします。私は、映画祭は公開前の段階なので、原題に色をつけたような形で意訳すべきではないと考えています。この映画の場合、原題の中国語を日本語に訳すと「甘い秘密」だと思います。『Together』も今おっしゃったように区切ると別の意味になって面白いですよね。どちらも素敵だなと思います。
 
監督:タイトルをつける時は「17歳に帰る」など、度々変更しています。どんなタイトルに変わっても大丈夫です。心臓も治りましたし!(会場笑い)
 
石坂PD:それでは、最後に監督にコメントをいただきたいと思います。
 
監督:今日は観に来てくださって、ありがとうございました。これは私の始めての長編で、予算も多くなかった中、フィルムで撮りました。何かご意見やご指摘などがあれば、教えてくださいこの映画を撮る時のロケ地は私が馴染んでおり、育ってきた台北の街角の雰囲気を十分にこの映画に込めたつもりです。台湾から持ってきた映画の雰囲気を味わっていただければと思います。外はたくさん雨が降っていますが、東京が大好きなので出かけたいと思います。これから映画をたくさん撮って、また東京に来たいです。
 
ワールド・フォーカス部門
Together(英題)

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