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2013.10.30
[イベントレポート]
「人間と自然、その共存ということも含め、どう歩んでいくのかをテーマに映画を撮り続けたい」―10/22(火)アジアの未来 『祖谷物語-おくのひと-』:Q&A

祖谷物語 -おくのひと-

©2013 TIFF

 
10/22(火)『祖谷物語 -おくのひと-』の上映に続き、Q&Aが行なわれました。
 
日時・場所:
10月22日(月) 16:54- @TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン1
登壇者:
蔦哲一朗(監督/製作/脚本/編集)、武田梨奈(女優)
 
高校野球の名将として知られる池田高校野球部の元監督、故・蔦文也氏の孫にあたるという蔦哲一朗監督。生まれ育った徳島の山間部にある祖谷(いや)を舞台にした本作の撮影では、苦労も多かったとのこと。「車で2時間かけていった地点から、さらに2~3時間かけて登山をした先で撮影をしていました。坂道もですが、雪山の時は大変でした。冬は氷点下でまつ毛が凍るくらいの気温でしたが、ストーブを運ぶことができないので、山の上で、みんなで抱き合って暖をとっていました。雪山を走っていくシーンは、足跡をつけてはいけないので本番一発だったのですが、雪の下がどうなっているのか分からず怖かったです」と主演女優の武田梨奈さん。監督も、「35㎜フィルムの撮影機材を背負って登山していました」と撮影当時を振り返りました。
 
一年の四季折々の風景を通して少女の成長が描かれている本作品では、春夏秋冬にそれぞれ二週間ほど現地入りして撮影していたとのこと。「実は撮影は夏からではなく、秋の撮影から始まり、秋、冬、そして夏を最後に撮ったので、役者さんたちとしてはやりづらかったと思います」と監督が言うと、武田さんは、「春シーンの撮影をした時には、東京に出ているという設定だったので痩せて髪も染めていたのですが、1~2か月後に一番初めの夏シーンの撮影があったので、監督に子供っぽく太ってくれと言われました」と話していました。
 
キャスティングについて聞かれた監督は、「田中泯さんは『たそがれ清兵衛』と『メゾンドヒミコ』の印象が強く、実はご本人が自給自足の生活をしているということは知りませんでした。田中さんをイメージして台本を書きオファーしたのですが、当時はちょうど田中さんがロンドンで『47 RONIN』の撮影をしており、ファックスでやりとりをしてこちらの思いを伝えて出演していただけることになりました」。河瀬直美さんが出演した経緯については、「河瀬さんの映画が好きで、奈良を舞台にずっと映画を撮り続けている河瀬さんの姿勢を僕も真似したい、徳島で映画を撮り続けたい、という思いがありお声掛けしました」と語りました。「河瀬さんの科学者の役は、春菜の何年後の姿かという意味合いで、あのキャラクターとしました。上司を見て自分の将来像を見てしまい、絶望するという設定で僕自身のことも投影しています」
祖谷物語 -おくのひと-

©2013 TIFF

 
春菜役は、当初なかなか見つからなかったという監督。「何名かオーディションをしたが、都会的すぎて祖谷に住んでいるイメージがなかったのと、身体能力という点で無理だと思った。そんな時、偶然に武田さん主演の忍者の映画を見て、この人ならいけるかもとすぐに事務所に連絡し、実際にお会いしてその場で決めました」。ハードな撮影で、だまされたと思わなかったかと問われ、武田さんは、「崖を落ちて下さい、と言われた時は正直だまされたと思いました!でも監督やスタッフのこういう映画が撮りたい、という熱意がすごく伝わってきて、私もその中に入っていきたいという気持ちが強かった。この作品に関わることができて、本当に良かったと思っています」と答えました。
祖谷物語 -おくのひと-

©2013 TIFF

 
反対運動のシーンについて聞かれた監督は、「実際に、祖谷では海外から来られた方が自然保護や文化を守るために活動をして、日本の良さを伝えようとしています。でも地元の方には、食べていくため道路工事をして稼ぐ必要があったり、鹿を駆除しないと畑を荒らされるという、実際に住むとそんなことも言っていられない現実があります。海外から来られた方は自分たちの思想を押しつけようとするのですが、僕もどちらかというとそっちの側なわけです。マイケルが地元の人に言うセリフは僕たちの都会的な発想だと思うし、和歌山県太地町のイルカの問題に通ずるものがあります。解決しようがない問題なので、解決というより今後どうやって歩んでいくのか、ということだと思っています」と答えていました。 
 
「人間と自然、その共存ということも含め、どう歩んでいくのかをテーマに映画を撮り続けたいとは思っています。できれば祖谷をフィルムで20年くらい記録したい」という監督は、最後に、「一人でも多くの方に映画を見ていただき、そして祖谷に足を運んでいただけると嬉しいです。自然にふれ、自分が生活するということはどういうことなのか、少しだけでも考えていただけたらと思います」と語りました。
 
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祖谷物語 -おくのひと-

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