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2013.10.29
[イベントレポート]
「10歳のころからずっと清須会議のことが気になっていました。」-10/24(木)クロージング作品『清須会議』:舞台挨拶

清須会議

©2013 TIFF

 
10/24(木)クロージング作品『清須会議』の上映に先立ち、三谷幸喜監督による舞台挨拶が行われました。
 
キャストも勢揃いの舞台挨拶の模様は ⇒コチラ

 
三谷幸喜監督(以下、監督):皆さん、こんばんは。三谷幸喜です。東京国際映画祭のクロージングにふさわしい映画ができました。日本映画がクロージングに選ばれるのは7年ぶりだそうです。その7年前に選ばれたのは市川昆監督の『犬神家の一族』だったそうです。僕、それにも出てるんです。「クロージング男」と呼んでください。(会場笑)
 
司会:『清須会議』は、三谷幸喜監督の6作目となる最新作で、日本史上初めて会議で歴史が動いたといわれる清須会議を描いた歴史エンターテイメントです。今回、清須会議を題材に選んだ理由はどんなところにあるのでしょうか?
 
監督:大河ドラマの影響なのですが、僕は子どものころから歴史が大好きでした。得意に戦国時代が大好きだったんですけど、なかでも清須会議の話を聞いたとき、戦国武将たちが一つの部屋に集まって話し合いをしているというビジュアルが浮かんで、子ども心に面白いなあと思いました。小学校4年生くらいの時に、たまたま親戚のおじさんが読んでいたサラリーマン向けのビジネス書に清須会議のことが出ていたのです。会議のやり方とか、会議は根回しが大事だとかいうことが書いてあって、戦国時代もこういうことをやっていたんだというのが心に残りました。それ以来、清須会議を題材に何かできないかなあとずっと考えていたので、構想42年というのは嘘ではありません。間の40年が飛んでいますけれども、10歳のころからずっと清須会議のことは気になっていました。
 
司会:今回、羽柴秀吉ではなく、なぜ柴田勝家を主役にされたのでしょうか?
 
監督:全員が主役ではありますが、やはりメインは柴田勝家ですね。勝者と敗者がいるとすれば、僕はどうしても敗者のほうに肩入れしてしまって。幕末も、坂本龍馬より新撰組に惹かれるように、負けた人が好きなんですね。
 
司会:色んな番組で主役を務められている役者さんたちが出演していますが、役所さんと大泉さんはどのような理由から配役されたのでしょうか?
 
監督:この映画のなかの柴田勝家さんは、茶目っ気もあるんだけど、ちょっと情けなくてだらしなくてこの人大丈夫かな、という感じですが、戦国武将として一本芯が通っていて、かっこよくなくちゃいけません。その両方を演じられる役者さんというと、僕は役所さんしか思い浮かびませんでした。
秀吉のほうも、茶目っ気があって、人たらしと言われているくらいですから、みんなの懐に入っていくかわいらしさもあるんだけど、計算高くて冷徹な面もあって、その二つの面を持っているということで、僕は大泉さんしかできないと思いました。
 
司会:今回三谷組に初参加の中谷美紀さん、伊勢谷友介さん、剛力彩芽さんのキャスティングの理由と、実際にお仕事された感想をお聞かせください。
 
監督:中谷さんはすごく清楚な方で近寄りがたいイメージがあったのですが、実際は本当にお茶目な方で、映画の中ですごく変な踊りを踊っているんです。中谷さんには、「これは男のドラマなので、中谷さんが出てくるシーンは、そこだけ観ている人がホッとするような、オアシスのような感じでやってください」とお願いしました。
伊勢谷さんは、織田信長の弟役です。織田家の肖像画を見ると鼻が大きいので、今回、織田家は全員鼻が大きいという設定にしました。スケートの織田信成さんも鼻が大きいじゃないですか。佐々木さんは本当の鼻ですが、妻夫木さんは鼻をつけています。坂東三津五郎さんの息子さんの坂東巳之助さんも鼻をつけています。伊勢谷さんは鼻がでかかったので、つけていません。キャスティングの理由は鼻です。鼻で選んだんです。
剛力さんは、CMやドラマでしか存じ上げなかったのですが、すごく現代っ子で明るくて天真爛漫というイメージがありました。なぜ彼女のことをそう思うかというと、大きな理由は眉毛なんですね。それに気づいたんです。ハの字になっていて、すごくかわいい。あの眉毛をもし取ってしまったらどんな顔になるんだろうと考えたら、情念の女で、はかなげで色々なものを背負っている感じになって、ぴったりだなと思いました。最後に彼女が微笑みを浮かべるシーンがあるのですが、あの怖さといったらない。あの顔ができる若い女優さんといったら剛力さんしかいないと思いました。
 
司会:衣装も大注目ですが、なにかポイントはありますか?
 
監督:衣装は黒澤明監督のお嬢さんの黒沢和子さんにお願いしました。黒澤さんのお言葉を借りれば、戦国時代はピーコック文化、つまり孔雀の文化だったんです。江戸時代はかなり質素な着物を着ていたそうですが、それ以前の安土桃山時代とか戦国時代は、みんな華やかで自分の好きな色を着て、1番自己主張ができた時代だったと伺ったので、とにかく個性に合った、できるだけ派手な着物を着てもらおうと、今回力を入れてみました。衣装を見るだけでも満足していただけるような映画になっていると思います。
 

司会:『清須会議』は会議で勝敗が決まるという現代にも通じるテーマが描かれていますが、会議で勝つための秘訣とは何だと思いますか。
 
監督:映画でも描かれていますが、羽柴秀吉はこの会議の一番大事なときに、席を立ってしまうんですね。僕は、それを本で読んで知ったときに、なんて秀吉はすごい男なんだと思いました。会議の1番大事なときに敢えてそこにいないようにするって、相当勇気がいると思ったからです。でも、自分がいないことによって、無言の圧力をみんなにかけて、秀吉は成功したんですね。ですから、会議に勝つ秘訣は会議に出ないということではないでしょうか。(会場爆笑)
 
司会:さらに大きな話になりますが、天下を取る人と取らない人、その差はどこにあると思いますか?
 
監督:映画のなかに、「民衆の心をつかめない人は天下を取れない」というセリフがあります。たぶん、だから、民の心をつかめない人が天下を取っても、その天下は長くは続かないんじゃないでしょうか。
 
司会:そして、歴史の影に女あり。実は女性も大活躍しますよね。男の物語の中で、女性の存在をしっかりとこの作品の中で描かれたのは、なぜでしょうか?
 
監督:日本の歴史はどうしても男性中心の歴史になってしまいます。この映画に出てくる、お市様とか松姫は、まだ名前が残っているから、一応ラッキーなほうだと思います。でも、他の女性達は、例えば誰々の母とか誰々の妻としか名前が残っていません。でも、男性側からするとですね、自分の好きな女性のためにもっと頑張ろうとか、好きな人にこっちを向いてほしいから俺は何か成し遂げるぞとか、女性っていうのはすごくモチベーションとしてすごく大事な存在だと思います。この中に出てくる羽柴秀吉も柴田勝家も、みんなそういうところがあったということです。だからこそ、歴史にあまりフューチャーされていない女性を今回描いてみたかったんです。
 
司会:最後に、ご来場の皆さまに一言お願いします。
 
監督:『清須会議』は、とってもゴージャスで豪華な映画だと思っています。僕が今まで作ってきたライトコメディとはちょっと違いますけれども、きっと皆さんに楽しんでいただけると思います。衣装も素敵だし、セットも素敵だし、すばらしい俳優さんが素敵な演技をしています。こういう映画こそ、でっかいスクリーンで隅々まで楽しんでいただきたいと思います。もうちょっとお話したいのですが、僕はもう暑くてたまりません。(会場笑)この辺で失礼いたします。今日は本当にありがとうございました。
 
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