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2013.10.30
[イベントレポート]
「監督は才能を発揮し、俳優の皆さんは最善を尽くしてくれました」-10/23(水)コンペティション『レッド・ファミリー』:Q&A

レッド・ファミリー

©2013 TIFF

 
10/23(水)コンペティション『レッド・ファミリー』:Q&A
 
登壇者:イ・ジュヒョン監督、キム・ギドクさん(エグゼクティブ・プロデューサー/原案/編集)、キム・ユミさん(女優)、パク・ソヨンさん(女優)、チョン・ウさん(俳優)
 

幸せそうに見える家族と、ケンカの絶えない家族。前者は北朝鮮のスパイ扮する疑似家族で、後者は韓国の崩壊寸前の家庭だった―。2つの「家族」の交わりを通して、南北統一への果てなき願いを込めた作品。
鬼才キム・ギドクが製作と脚本を手がけたドラマで、自身の監督作と一線を画するエンタテインメントぶりを発揮、心揺さぶる展開に、客席からすすり泣きの声が漏れ聞こえた。
Q&Aでは、キム・ギドクの温かい人柄に沸き立ち、監督の物静かな語りに聞き入り、キャストの爽やかな言葉に笑いの華が咲いた。終了後に、監督とキャストによるサイン会が開かれ、場内は夜半まで熱気に包まれた。
 

矢田部PD:東京国際映画祭のワールド・プレミアに、素晴らしい作品を持ってきてくださり、心から感謝します。まずは、俳優の皆さんにご挨拶をいただきましょう。
 
パク・ソヨンさん:コンバンハ。ワタシハ、パク・ソヨンデス(笑)。今年で17歳になります。劇中ではミンジを演じました。よろしくお願いします。
レッド・ファミリー

©2013 TIFF

 
キム・ユミさん:映画祭に来るのは初めてです。映画(『レッド・ファミリー』)を観るのも今日が初めてで、感慨を新たにしています。皆さんとお会いできて、本当にうれしく思います。
レッド・ファミリー

©2013 TIFF

 
チョン・ウさん:遅い時間までお席に残ってくださり、ありがとうございます(笑)
レッド・ファミリー

©2013 TIFF

 
矢田部PD:そして、キム・ギドクさん。ようこそ東京へいらっしゃいました。ひと言ご挨拶をお願いします。
 
キム・ギドクさん:私は『レッド・ファミリー』のシナリオを書きながら、とてもよく泣きました。映画を観ながら、やはり悲しい気持ちになりました。
レッド・ファミリー

©2013 TIFF

 
矢田部PD:続きまして、イ・ジュヒョン監督です。
 
イ・ジュヒョン監督:今日は感謝すべき人がたくさんいらしています。このようなメッセージ性のある作品を委せてくれたキム・ギドク監督、映画に大きな余韻をもたらしてくれた俳優の皆さん、完成するまで粘り強く待ってくれた観客の皆さん、本当にありがとうございました。無事にお披露目でき、皆さんと心を通わせる機会がもてたこと、東京国際映画祭でワールド・プレミア上映という機会が与えられたことに、心から感謝します。
レッド・ファミリー

©2013 TIFF

 
――心震える作品をありがとうございました。矢田部さんがプレ・イベントで「泣ける作品」と言ってましたが、そのとおりの作品でした。どんなふうに着想を得て、どのくらいの期間で作られたのでしょう?
 
キム・ギドクさん:シナリオを書く際に、家族とは何かを考えました。韓国と北朝鮮の家族が描かれますが、どちらが正しいというのではなく、2つの家族を描きながら、本当の家族とは何かを問いかけようとしました。
1つ質問したいのですが、客席のなかに、北朝鮮籍の方、朝鮮民主主義共和国の方はいらっしゃいますか? というのも、この映画を観てどう思ったのか、ぜひ伺いたくてお尋ねしました。仮にいらしても、手を挙げることは難しいかもしれませんね。それでも感想を伺えたらうれしいです。
 
イ・ジュヒョン監督:キム・ギドク監督からシナリオをいただき、撮影に入るまでのプリ・プロダクションに約2ヶ月かけました。映画の内容を考えると短い時間ですが、キム・ギドク監督から短期間でも集中すればいいのだと教わり、努力しました。
撮影回数は12回です。とても少ない回数なので、そのぶん、俳優の皆さんは大変苦労されたんじゃないかと思います。でも出演者やスタッフが情熱を注いでくれたおかげで、効率のいい作業ができました。
 
――大変面白く拝見しました。キム・ギドク監督作品とは、ずいぶん趣きが違いますが、ご自分で監督をされなかった理由を教えていただけますか? それから、工作員の役をされた皆さんは、役作りでどんなことをされたのか教えてください。
 
キム・ギドクさん:この『レッド・ファミリー』は、南北問題を扱った私の2本目の作品になります。1本目は、劇中にも登場させた『プンサンケ』(2011・キム・ギドク製作総指揮/脚本・チョン・ジェホン監督))です。南北問題は、私ひとりではなく、韓国人に残されたとても大きな宿題です。ここにいるイ・ジュヒョン監督も、そのことをとてもよく理解しているので、今回は彼に監督を任そうと思いました。
私が監督するのは、主に変わった映画です(笑)。『メビウス』(2013・ベネチア国際映画祭上映作)や『嘆きのピエタ』(2012)のような作品は、自ら監督として演出をします。
 
キム・ユミさん:工作員を演じるにあたっては、何はともあれ、方言を習得しなければなりません。インターネットで北朝鮮の人たちの話し方を聞いたり、実際に脱北してきた方にお会いして、訛り言葉を練習しました。
実際に演じるにあたっては、映画のストーリーを牽引する必要があったので、工作員という役柄に添って、当事者の感情になりきることに留意しました。韓国と北朝鮮の文化的な架け橋になればいいという思いで、演じていました(笑)
 
パク・ソヨンさん:私も北朝鮮の方言を話すのが初めてでしたので、それが大きな心配でした。また、アクションをするのも初めてだったので、どうすれば感情を表現しながらアクションをできるかが気になり、アクション・スクールで練習をしながら撮影に臨みました(笑)
 
チョン・ウさん:質問とちょっと離れてしまいますが、キム・ギドク監督の作品に参加できて光栄です。とてもいいエネルギーをもらえたと思っています。
演技については、方言やアクションは楽しみながらできました。予算の関係もありますが、撮影中はとても寒くて堪えるのに大変でした(笑)。僕よりも、祖父役のソン・ビョンホさんやキム・ユミさん、パク・ソヨンさんは苦労したと思います。
 
矢田部PD:キム・ギドクさんは、イ・ジュヒョンさんに今後、どんな監督になってほしいと願いますか?
 
キム・ギドクさん:イ・ジュヒョン監督は、もともとフランスで映画の勉強をしています。彼が作ったアニメーションとドキュメンタリーを観ましたが、大変な才能の持ち主だと感じました。だから今回の『レッド・ファミリー』を任せても大丈夫と考えたし、実際に出来たものを観て、立派な仕上がりだと思いました。イ・ジュヒョンは必ずいい監督になる。そのためにも、初心を持ち続けてほしいと思います。
この場にいるキム・ユミさん、パク・ソヨンさん、チョン・ウさん、本当にお疲れさまでした。少ない予算で、短期間で撮り上げた映画でしたが、監督は才能を発揮し、俳優の皆さんは最善を尽くしてくれました。今日映画を観て、改めてそのことを感じました。この場を借りて感謝したいと思います。
 
矢田部PD:最後にイ・ジュヒョン監督、ひと言お願いします。
 
イ・ジュヒョン監督:今日は本当に感動的な日です。私たちの映画が世界初披露されたのです。ほんとに幸せだなと感じています。東京という場所で、アジアの中のストーリーが語られ、皆さんはそこに描かれるさまざまな感情や痛みを理解してくださいました。いい機会が与えられたこと 初上映の場所が東京だったことをうれしく思います。観てくださった皆さんと、東京国際映画祭のスタッフに、改めて感謝申し上げます。
 
――(場内拍手)
 
コンペティション
レッド・ファミリー

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