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2013.10.29
[イベントレポート]
「ゲリラや戦闘が過去のことになることを望んでいます。」-10/24(木)ワールド・フォーカス『Jin』:Q&A

Jin

©2013 TIFF

 
10/24(木)ワールド・フォーカス『Jin』上映後、レハ・エルデム監督が登壇しQ&Aが行われました。
 
石坂PD:監督は東京国際映画祭と大変縁の深い方でいらっしゃいまして、もう10年位前にコンペティション、それから数年前には全作品上映を行いまして、今回が3回目になりますけれども、一言ご挨拶いただければと思います。
 
レハ・エルデム監督:まず、本当にありがとうございました。我が家に帰ってきたような感じがしています。今回の2作品を上映しますと、私の全作品が上映されたということになります。つまりイスタンブールに続いて、東京が2番目となるわけです。これからもこのように続いて欲しいと思っています。
 
石坂PD:作風が非常に異なる2作品を1年のうちに撮られたということですが、これはどちらを先に撮られたのでしょうか?
 
レハ・エルデム監督:まず『Jin』を撮りましたが、『歌う女たち』の方が早い段階から2、3年準備をしていました。その間に『Jin』の撮影を入れてみたところ、できたということでした。本当に大変なでしたが、できたらこれからも1年間に2本撮れるようにできればと思っています。
 
石坂PD:『Jin』についてですが、トルコのどの辺りでロケをされたのか教えてください。
 
レハ・エルデム監督:今回の作品ですけれども、当該の戦闘地域で撮影したものではありません。これを撮影していた頃、まだ戦闘が続いておりました。1カ所は北西エーゲ海地方のほう、そしてもう1ヶ所のほうは東南地方のほうでした。こちらも山岳地帯です。
 
石坂PD:主人公ジン役の少女ですけれども、これはプロの役者さんなのか、あるいはどのように探して見つけられたのか。そのあたりを教えてください。
 
レハ・エルデム監督:彼女は俳優畑から来たのではなく、俳優畑とはまったく関係ない人でした。彼女の身体的な特徴、そして持っている能力が我々を大変惹きつけたのです。彼女は『歌う女たち』でも演じています。
 
石坂PD:戦闘地帯ではないにしても、ゲリラの話なので、撮影に困難があったのではないかと思うのですが、そういう事がもしあったのであれば教えてください。
 
レハ・エルデム監督:それは今回最も困難な部分だったと言ってもいいかもしれません。その当時、まだ状況は緊張したものでした。トルコ中の役者達が武器を持ち、その地域のゲリラの戦闘の様子を演じているのを人々が見るのは、容赦し得ないようなことでありました。というのは、まだ戦闘が続いていたので、ゲリラの格好をして撮影をするということは我々も非常に緊張したのでした。
 
石坂PD:動物達の演技ですけれども、どういう風な指導をされたのか教えてください。
 
レハ・エルデム監督:動物は一部現地に連れて行きました。もちろん簡単な事ではないですけれども、獰猛な動物ですので。あとは現地の動物を撮りました。
EO6Q9568s

©2013 TIFF

 
Q:撮影している途中に怖くなり、中断しようと思わなかったのですか?どうして監督はこの映画を完成させることができたのでしょう。映画を撮った理由をとっても知りたいです。
 
レハ・エルデム監督:この状況はトルコでこの30年来続いています。戦闘が収まったのはこの1年ぐらいのことです。この間に3万人を超える方が亡くなり、そのほとんどは若者でした。ですから、この作品を2作品の製作の間にもってきました。これが理由です。このことに対して黙ってはいられない、何かしなければいけないと。先ほどおっしゃったように大変困難でした。日中撮影が終わり夜ホテルに戻ってくると、日中撮影していたことが現実となってTVのニュースで流されている。それを見ると、自分たちは何をやっているのだろうという気持ちになってしまうわけです。この作品を完成させることができ、現在戦闘が収まっているということがとても幸せです。もう戦闘が始まらないことを願っています。
 
Q:映画の中で遠くから引いて被写体が映すシーンで、国の美しい景色がたくさん出てきて感動しました。なぜ監督は一歩引いて遠くから人や自然をとらえたのですか。もし自然の美しさ以外にメタファなど理由があったら教えてください。
 
レハ・エルデム監督:壮大な自然の中で小さな娘がなすすべもなく歩いている。娘というよりひとつのフィギアが歩いている、大きな世界の中で。こういうことかもしれません。
 
Q:動物に込められた意味やメタファーはありましたか?
 
レハ・エルデム監督:動物に関しては、次のような観念を持っています。あたかも彼らは、私たちの生き様のあらゆる場面における声なき証人であるかのように、彼らの目は我々が置かれている状況すべてを見ているのだと思います。となりますと、これは非常に喜劇的、ある意味コミカルなことでして、それを今回強調するために使いました。ある種、ストーリー性を高めるために、少女の周りをそうした承認たちを取り巻いているという形にしました。
 
Q:緊張感あふれる素晴らしい映画でした。しかし、クルド人のテロリスト少女を主人公にすえるということで、トルコ政府から弾圧とかあったのではないかと推測され、そういうことがあったとしても、意気込みはあって欲しいと思ったのですが。Jinを殺したというのは政府に対する配慮なのでしょうか?
 
レハ・エルデム監督:まず、Jinは死んでいません。死に近づいている状況であろうけれども、死んではいません。現在は武装闘争が終わり、和平についての話し合いが行われています。以前は緊張状態が続き、映画でゲリラの服装を見るだけでも不快感を覚える。そういう状況がありましたが、今はゲリラ側との停戦交渉もあって、変わりつつあるのではないかと。ゲリラや戦闘が過去のことになることを望んでいます。
 
Q:Jin というクルド人少女の名前についてですが、アラビア語では「精霊」という意味でも知られています。少女がトルコの男性たちよりも動物たちと心を通わしているようなシーンが良かったと思うのですが、Jinという名前が精霊的な意味も含めて付けられたのですか?
 
レハ・エルデム監督:Jinはクルド語の女性名ですが、「i」の文字の点の部分が傘の形(î)になると、それは「人生、生きること」という意味で、点(・)になると「女」という意味です。ですから名前そのものが「女性」と「生きること」の両者を結びつけていることになります。映画上における写真のような役割を果たしている名前です。クルド人であるよりも、ゲリラであるよりも、女性であることが困難であること。残念ながら私の国では、女性であることはそう簡単なことではありあせん。しかも問題が起こっている当該地域になりますと、より一層困難なことなのです。映画の中でも、彼女は男性たちより動物たちからいろいろな援助を得ています。これは、現実が重く辛いということを反映しています。
 
Q:問題を映画化するにあたって一番大切にしているものは何かということ。そして製作の段階では何から作るのか、脚本からなのか、どういう場所で撮るということからのなのか、伺いたいと思います。
 
レハ・エルデム監督:まず何から始めるかというのは毎回異なります。今回の映画は戦争をはじめさまざまな題材を入れています。しかし戦争だけでなく自然を題材にしたひとつの映画でもあります。自然の光景をひとつひとつ選んで作っていきます。その段階で色々なパーツが出てくるのでそれを選んで組み合わせるということもやっています。
しかし私が最も重きを置いているのは編集作業です。映画作りでもっとも大事なところだと考えています。編集段階ですべてのものを集めてきて整理して映画になるわけですから。他の芸術分野と映画との違いはここなのです。従って重要な部分なので、ここだけは他の人に譲りません。
 
石坂PD:最後に一言お願いします。
 
レハ・エルデム監督:今回は来てくださって、本当にありがとうございました。嬉しく光栄に思っております。
 
ワールド・フォーカス
Jin

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