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2013.10.29
[イベントレポート]
「ほんとのビール工場で撮影して、実際にビールを飲みながら撮影したのよ。」―10/18(金)コンペティション『ドリンキング・バディーズ』:Q&A

ドリンキング・バディーズ

©2013 TIFF

 
10/18(金)コンペティション部門『ドリンキング・バディーズ』:Q&A
 
登壇者:アリシア・バン・クーバーリング(プロデューサー)
 
地ビール工場に勤める男女の「飲み仲間」が互いの恋人を引き連れ、旅行に行くと何だかビミョーな関係に……。友だち以上恋人未満の距離感を即興演出で掘り下げたロマンティック・コメディ。実際にビールを飲みながらアドリブの軽妙な会話を交わす、アルコール度数の高い作品でもある。
1981年生まれの監督は低予算で多くの作品を撮り、今回、初めてプロの俳優を用いて大きな成功を収めた。タランティーノが選ぶ今年の映画ベスト10に選ばれたことを聞かれると、プロデューサーは嬉しそうにジョークで応酬してくれた。
 
矢田部PD:ビールのご用意はありませんが、皆さん、どうぞお付き合いください。アリシアさん、胸がキュンとなる作品をありがとうございます。
 
アリシア・バン・クーバーリングさん(以下、クーバーリングさん):ワオ! アリガト!! 初めて日本に来て、今日が初日の上映でもうホントに楽しんでいます。この映画は英語の会話量が半端じゃないので、ちゃんと伝わるのかドキドキでした。ぶじ日本で上映されて、本当に素晴らしいと思っています。
 
矢田部PD:作品のことなら何でも答えられるそうなので、皆さん、たくさん質問して下さい。
 
クーバーリングさん:もし質問がなかったら、自分からお話ししますよ(笑)
 
矢田部PD:ジョー・スワンバーグ監督は日本でそれほど知られていませんが、すばらしい演出力を持った監督です。監督との出会いはどんなものだったんでしょう?
 
クーバーリングさん:ジョー・スワンバーグは本当に面白い履歴の人です。20代初めに1万ドルの資金で、たくさんの小さな映画を作りました。クルーなし、照明なし、お金なしのなか、監督と友人で5〜10本の作品を作ったのです。2011年には7本もの作品を製作しました。とても多産な人です。いつも即興で作ってきました。
私はニューヨークでプロデュース業を始める傍ら、映画ジャーナリストとして映画祭に行って、監督にインタビューする仕事をしていました。またCM作りもやっていました。
そんなある日、監督から電話が来て、子どもが生まれたこともあって、ここらで大きな映画を作りたいけど手を貸してもらえないかと言われました。プランがあってプロの役者に出演してもらうとなると、幾らかかるかもしれないとも聞きました。結果的に、3週間で資金が集めることができたんです。監督はこれまで脚本のない映画を作ってきて、今回は形ばかりの脚本はあったけど、かなりの部分を即興で作りました。
 
矢田部PD:ちなみに、引越し中に道を塞いでクレームを言うドライバーが、監督さんです。
 
クーバーリングさん:みんなをボコボコにしちゃうの(笑)。ほんとに面白かったわ。彼と仕事をするのは嬉しいけど、これまでほんの少人数で作ってきた人だから、実はちょっと緊張していたんです。今回は小さな映画ではなく、映画スターが出演し、投資家も絡むインフラの整備された企画です。彼らとどう折り合いを付ければいいのか、監督はまだ経験していない。でも撮影初日になって、そんな思いは杞憂だったと知りました。小ロットながら何本も作品を作ってきたおかげで、監督は役者との付き合い方を心得ていて、役者もすぐに彼を信頼するようになったのです。最初の5分で緊張が解けてホッとしました。
 
———欧米版ポスターの4人はとてもチャーミングですが、皆さんオーディションで選んだのですか?
 
クーバーリングさん:女の子たちがビール太りするくらい、飲みまくってほしかったというのはジョークよ(笑)。オーディションはしていません。どうせ即興で撮るから、やっても仕方ないと思ったんです。ロサンジェルスのキャスティング・ディレクターがスカイプ・ミーティングを設けてくれて、監督がインターネットを通じて彼らと話をしました。
監督が留意していたのは、映画とは別に、役者が実人生をちゃんと生きているかということです。生活がしっかりしていれば、恋愛関係でも人間関係でも言いたいことが必ずある。そういう人なら、即興でも必ずうまい演技ができるはずだと考えていたんです。キャスティング・プロセスとしては、比較的短い2週間で配役が決まりました。
ドリンキング・バディーズ

©2013 TIFF

 
———楽しい映画をありがとうございます。主役のオリヴィア・ワイルドとジェイク・ジョンソンがよく食べよく飲み、観ていて気持ちよかったです。食べながらの撮影で、現場もさぞ楽しかったのではありませんか?
 
クーバーリングさん:もうとっても楽しかったわ。ほんとのビール工場で撮影して、実際にビールを飲みながら撮影したのよ。実はジルを演じたアナ・ケンドリックは体がちっちゃくてビールが飲めないから、彼女だけノンアルコール・ビールを出す約束でした。撮影中、アナだけノンアルコールで通していたんです。
ところがトランプする場面を撮っている時、彼女がフラフラしてきて、「もう酔っ払っちゃった!」といきなり吹き出したの(笑)。見たら普通のビールが出ていたんです。みんな大笑いで、15分くらい笑いが止まらなかったわ。おかげでその後、彼女が眠る場面はすぐに撮れなくなってしまったくらい。契約上の約束を果たすのがプロデューサーだから、私は危うく逮捕されるところだったわ(苦笑)。現場に居たときはそんなに飲んでると思わなかったけど、映画を観ると、随分飲みまくっていたんだなとわかります。
 
———オリヴィア・ワイルドとジェイク・ジョンソンはあれだけ飲んで、演技に支障を来さなかったのですか?
 
クーバーリングさん:大丈夫だったと思います。というのも、みんな酔ってしまい覚えてないからです(笑)。監督は、撮影現場を楽しい雰囲気に保とうと、気を遣っていました。スタッフが大声で騒いだりせず、効率よく撮影し、終わったらプールで寛ぐようにしていました。そんなふうに、ユルくて楽しい空気を大切にしました。本番だけ楽しくするのではなく、ふだんの雰囲気を大切にして、映画に反映させようとしたのです。
 
———皆さん、とても自然な振る舞いですけど、テイク数はどれくらいでしたか?
 
クーバーリングさん:とても少なかったのよ。せいぜい2〜3テイクかしら。まず最初に長すぎるほどテイクを撮って、役者にどんどん喋らせます。その中でどの部分が気に入ったのかを監督は話します。次にその部分を集中して撮影するという具合で、3テイク目には役者も馴れてきて、台詞を考えたりせず自分のことを話せるようになります。自分自身を生きることができるんです。これはもう驚くべき成果でした。
 
———タランティーノが選ぶ今年の10本に選ばれていましたね。アメリカ本国での反響は如何でしたか?
 
クーバーリングさん:この映画を選んでくれるなんてクレージーよね。きっと血がドバッと流れる暴力描写が気に入ったんじゃないかしら(笑)。
幸いにアメリカでも好評で、特にビデオ・オン・デマンドとか iTunesの映画配信では人気を集めました。皆さん、家でのんびり観るのにいいと思ってくれたんですね。もともと、そんな風に観られる作品にしたかったので、とてもハッピーです。
映画は、テキサス州オースティンで開かれるサウス・バイ・サウスウエスト・フィルム・フェスティバルで初上映されましたが、それこそドキドキものでした。監督のこれまでの作品と全く違うスタイルなので、リスクを感じていたんです。これまでのスタイルを捨て商業作に鞍替したのかと非難されるのを心配しましたが、いい反応ばかりで安心しました。ご覧くださった方々は、映画のもつ率直さを気に入ってくれたんです。
 
———ストーリーの着想源があれば教えて下さい。
 
クーバーリングさん:2つの流れがあって、たしか、ビール工場に勤める2人の同僚がカップル同士で友人になれるかというのが発端だったと思います。でも監督は、撮影現場を親密に形成できたからもっと掘り下げたくなり、友情の境目はどこにあるのか、どこまで友情でどこから仲違いするのかが知りたくなったのです。監督の映画はどれも個人的なもので、描かれる内容に誰もが個人的な言い分をもつことができる。そこが面白いところです。
 
———とてもキュートで面白い作品でした。アリシアさんと監督は、次にどんな作品を撮ろうと考えてますか?
 
クーバーリングさん:セーラー服って初めて見たけど、アナタが来てるの凄くカワイイわね(笑)。
ジョーと私は大手映画会社と組んで、次にまたロマンティック・コメディを撮りたいと考えています。そうなると、ジョーは初めてきちんとした脚本を書かないといけないでしょうね。ジョーはまた、ずっとやりたがっていたTVシリーズを監督していて、その合間に余暇を使って2本の作品を製作中です。監督業でお金が稼げるようになったのでよかったです。
私のような独立プロデューサーが映画を撮り続けるのは大変ですが、できれば映画の境界を揺るがす作品を撮っていきたいと思います。具体的なプランはまだありませんが、これからどんどん作っていきたいと思います。
 
矢田部PD:私たちを揺るがしてくれるような作品を期待しています。
 
クーバーリングさん:また新作を持ってトーキョーに来たいと思います。待ちきれないくらいです。
 
コンペティション部門
ドリンキング・バディーズ

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