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2013.10.21
[イベントレポート]
「三叉路がすごく好きです」―10/19(土)日本映画スプラッシュ『友だちと歩こう』:Q&A

日本映画スプラッシュ部門『友だちと歩こう』の上映に続き、Q&Aが行なわれました。
 
日時・場所:10/19(土)@TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン6
登壇者:緒方 明(監督/プロデューサー)
友だちと歩こう

©2013 TIFF

 
クランクインの一週間前に東日本大震災が起きて撮影が延期、3年越しの完成となった『友だちと歩こう』について、緒方明監督にお話を伺いました。
 
緒方 明監督: この映画は素うどんのような作品。ネギすらものっていない、出汁とうどんしかない映画ですが、出汁が脚本で麺が俳優。脚本と俳優の魅力を前面に出した、シンプルで味わい深い映画だと思っています。
 
脚本を手がけた青木研次氏と3年前に飲み屋で、「自主映画を撮ろう」と話したところから始まったという本作品。作品の冒頭に流れるクレジットは映画に出資した友人の名前とのことで、監督自らもギターを購入するための貯金を製作費にあてたそうです。「脚本家の青木さんにノーギャラの仕事かと聞かれ、ノーギャラどころかお金も出してくださいと伝えました。好きなことを書くなら、お金を出してくださいと。さらに以前に仕事をしている友人の(富男役の)上田耕一さんや(トガシ役の)斉藤陽一郎さんには、お金がないから2~3日でいいので、とお願いしました。結果的には2~3日では済まず、3年程かかったのですが」と語り、会場の笑いを誘いました。
友だちと歩こう

©2013 TIFF

 
当初は短編として撮ろうとしていた『煙草を買いに行く』のクランクイン一週間前に東日本大震災が起こり、一年後に撮影再開となったのですが、「1話を撮った後に、続きを見たいね、ということになり青木さんが2~4話の脚本を書き上げてくれた。僕は高校の同窓会に出席し、儲かってそうな人に出資をもちかけて撮影を続けました」
 
もともと道が好きだという監督は、「三叉路がすごく好きで、自分が監督した映画すべてに三叉路のシーンが登場しています。本作『友だちと歩こう』では、ポスターのビジュアルにも使用しています。分岐路、つまりどっちに進むのか?という点が映画的にも面白いと思っています」
友だちと歩こう

©2013 TIFF

 
道、そしてそこを歩く人物を描いた映画の撮影は、「意外に大変だった」と監督。「土手を転がり落ちるシーンは、止まった場所、転がり落ちる場所、落ちたあと、それぞれが異なる道で撮影されています。川沿いを自転車で走ってロケハンしたのですが、柵があったり土手がコンクリートになっていたり、転がり落ちることができる土手は思いのほか少なく、相当数のロケハンを重ねさまざまな道のシーンを撮影しました」
 
オープニングと劇中の崖を登るシーンの独特な音楽は、監督自らの作曲だという。「僕がギターを弾いて、知り合いにピアニカやベースを弾いてもらって録音したものを、音楽監督 のCobaさんがミックスしてくれました。意図としては、生ギターやアコーディオン、ピアニカを使うような東欧のシンプルな曲をイメージしました」
 
「僕が映画を撮るときに俳優さんに求めることは、登場人物の手触りというか実存性、こういう人なんだなという前後の人生を感じさせてくれる芝居。日本の映画やドラマは現場に来て、テストを1~2回やって本番というパターンがほとんどで、現場で初めて俳優の芝居を見ることが多い。しかし、この作品では低予算ながらもちゃんとやろうと、撮影前に稽古場を借り、俳優さんと共に芝居を探す作業ができたので、贅沢につくれたと思う」。シナリオだけ見ると重い話を、軽みで描くことに挑戦したかったという監督。「上田さんにしても高橋さんにしても俳優陣がベテランですから、とても味がある演技合戦になった。ここまで俳優を魅力的に撮れた作品になったことを幸福に思っています」
 

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