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2013.10.20
[イベントレポート]
「退屈でない、何もない時間を撮りたかった。」―10/17(木)コンペティション部門『エンプティ・アワーズ』:Q&A 

エンプティ・アワーズ

©2013 TIFF

10/17(木)コンペティション部門出品作品『エンプティ・アワーズ』の上映後、アーロン・フェルナンデス監督と主演のクリスティアン・フェルレルさんが登壇し、Q&Aが行われました。
 
矢田部PD:ようこそ東京にいらっしゃいました。この作品が今回のコンペティション部門の最初の上映を飾ることになり、とても嬉しく思っています。東京に着かれたばかりかと思いますが、東京の印象をお聞かせいただけますか。
 
フェルナンデス監督:「こんにちは」(日本語で)。今回はお招きいただきまして、本当にありがとうございます。私たちは日本に初めて来ましたが、以前から東京に来ることを夢に見てきました。日本は私たちにとって憧れの国です。今回みなさんと一緒に私の映画を観られたことを、とても嬉しく思います。昨夜日本に着いたばかりですが、ちょうど台風の後に到着することができて幸運でした。
エンプティ・アワーズ

©2013 TIFF

 
フェルレルさん:どうもありがとうございます。この作品が最初の上映だと聞き、とても嬉しいです。私も初めて日本に来ましたが、みなさんに少しでもメキシコの文化と日本の文化の違いなどを感じていただければと思います。お招きいただき、本当にありがとうございます。
エンプティ・アワーズ

©2013 TIFF

 
矢田部PD:この作品は監督にとって2本目の作品です。1本目が話題になったことで、カンヌ映画祭のサポートを受けながらこの脚本を書く機会を得られたそうですが、この若い少年と年上の女性のストーリーはどのような形で浮かんできたのでしょうか。

 
監督:仰られたように、今作の脚本を書く際、カンヌのシネフォンダシオンからの支援が大きな助けとなりました。レジデンスという制度があり、カンヌで3ヵ月半の間、脚本を書くことだけに集中できる機会をいただいたのです。
以前、メキシコの東側にある海岸地帯のベラクスルを車で走っていた時に、海岸沿いにこの映画に出てきたような小さなモーテルがたくさんありました。その何もないところにある、少し危険な印象も受ける小さなモーテルを見たときに、私は主人公のセバスティアンを思いつきました。そこから脚本を書き始め、4年後に完成したのです。
 
矢田部PD:ロケーションも映画の重要な要素のひとつだと思いますが、映画に出てくる場所は観光地で、時期はオフシーズンだと解釈してよいでしょうか?
 
監督:あの場所は、みなさんがご覧になったように、小さなホテルかモーテルのようなところで、ほとんど何もないので、観光地としても有名ではありません。でも私はその空間が気に入りました。時間が失われたような、あの空間に魅せられたのです。
 
矢田部PD:俳優の存在はもちろん重要だと思いますが、クリスティアンさんはどの段階でこの企画に参加されたのでしょうか。また、初めて脚本を読んだときの感想を教えてください。
 
クリスティアンさん:自分の仕事や自分のやっていることを変える転機でした。もっと活動的に色々なことをしたいと思っていた時に、この脚本に出会いました。非常にゆったりとした、とてもシンプルで平坦な物語なのですが、絶妙な感情描写があるところがとても面白いと思い、参加することになりました。私にとって、この作品は本当に忘れがたい、とてもよい経験になりました。
 
矢田部PD:これはオーディションですか?
 
クリスティアンさん:とても長いプロセスでした。オーディションでは、まず自分の人となり、自分自身を表現しました。それからカメラテストを受け、そのあと女優と一緒にスクリーンテストを受けました。
 
監督:本当に、とてもとても長い過程でした。
 
矢田部PD:若い男性と年上の女性、波長のあう二人を見つけるのは大変だったのではないでしょうか?
 
監督:私が監督としていつも気をつけていることはキャスティングです。いくら中身の脚本がよくても、キャスティングが間違っていると事はうまく運ばないので、慎重になっています。
 
Q:タイトルが『エンプティ・アワーズ』になっていることに加え、先ほど監督が何もない時間や空間がお好きだと言われましたが、映画の中で何もない時間や空間を表現するのは難しいと思います。映画を作る上でもっとも気をつけたことは何ですか?
 
監督:仰られたように、今回の映画は大きな挑戦でした。物語はとても小さいですし、大きな出来事が起きるわけでもありません。こんなフレーズがあります。「何もない時間は退屈な映画とは違う」、と。ですから、そのフレーズをいつも念頭において、退屈でない何もない時間を撮りたいと思いました。気をつけたところは、フレームの中でどう映画を撮るかということです。例えば、フレームの中の小さなところに常に楽しめるようなこと、それはビジュアルであったり、感受性の強い方にはわかるような音楽であったり、音であったり、そういうものを入れることで、楽しんでいただける方には楽しんでいただける映画を作りたいと思いました。私としては微妙でかつ緻密な演出をしているので、その形を楽しめる方は感受性の強い方だと思います。
 
Q:最後にイグアナが出てきましたが、あの場所に本当に棲んでいるのでしょうか?また、イグアナが出てきた理由を教えてください。
 
監督:たくさん棲んでいました。撮影中、フレームに入らないようにと石をどけたとき、イグアナの巣があって、たくさんのイグアナがいました。脚本ができあがった後のことです。ミランダとセバスチャンが結ばれた後に天井の染みを見上げるシーンがありますが、ミランダはその染みのことを「人魚に見える」と言い、セバスティアンは「イグアナに見える」と言います。そのセリフがあるため、プールにいるイグアナを見て、セバスティアンとのあの時間、あの会話を思い出すという場面に辿りつきました。
 
Q:クリスティアンさんに質問ですが、映画と同じように年上の女性に憧れますか?
 
クリスティアンさん:(笑いながら)女性が好きということが僕にとって大切で、それ以外のことはあまり重要ではないと思います。けれども、もちろん、僕とセバスティアンは一緒ではないので、できれば同じ世代の人と一緒に過ごしたいです。
 
エンプティ・アワーズ

©2013 TIFF
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