公式インタビュー コンペティション 東京 サクラ グランプリ受賞 『ウィ・アー・ザ・ベスト!』
―ルーカス・ムーディソン(監督/脚本)、ココ・ムーディソン(原作)
1982年のストックホルムでパンクバンドをはじめた13歳の少女たち、ボボ、クララ、ヘドヴィグの3人。思春期の複雑な胸のうちを軽快なタッチで描き、「東京 サクラ グランプリ」に輝いた青春映画『ウィ・アー・ザ・ベスト!』。ルーカス・ムーディソン監督と、監督の妻であり原作マンガの作者であるココ・ムーディソンさんにお話を伺いました。
――ココさんの原作を映画化するという企画はどのようにして始まったんでしょうか?
ルーカス・ムーディソン監督(以下、ムーディソン監督):ココが2年かかって2008年に漫画を描きあげたわけですが、私がそれを映画にする決意を固めるのに時間がかかったんですね。舞台が80年代なので、セットデザインやコスチュームなど全部作り込まなくてはいけない。ただ街に出て撮ればいいという作品ではないので、ためらっていたんです。でも、4年経って、やっぱり撮ろうと勇気を振り絞ることにしました。
――バンドを組む3人のキャストもさることながら、セットデザインやコスチュームもとても魅力的です。ご自身の体験を反映した原作を描かれたココさんの意見も反映されているんですか?
ムーディソン監督:私自身もこの映画の映像的な出来上がりをすごく気に入っているんですが、とても80年代っぽい感じがするのは、逆に80年代色を出し過ぎないように注意したからだと思います。ものすごくカラフルでいかにも80年代的なものを避けて、ニュートラルなものを選んだのが良かったのかもしれません。監督として私はすべてのレベルで関わりましたが、ココには仕事として関わってもらうという感じではなく、「ボボの履いてるパンツはどんな雰囲気がいいかな」という感じで意見を求めていた感じです。
ココ・ムーディソン(以下、ココ):ルーカスが私の本を映画化したのは初めてでしたが、いつも同じ部屋や隣の部屋で仕事をしているので、これまでもお互いのプロジェクトについて話したりしていたんですね。そういう意味ではいつもと同じでした。もちろん今回の映画に関しては、ルーカスが衣装をはじめ、いろんな細かい質問をしてきましたけど。
――ボボのファッションは、ココさんの10代の頃の雰囲気なんですか?
ココ:はい、恐ろしいくらい似ているシーンもあります(笑)。映画だと色使いも表現されるので、ものすごくリアル再現されていますね。
――主役の3人の女の子たちはオーディションで選ばれたそうですが、彼女たちを選んだ決め手を教えて下さい。
ムーディソン監督:決め手は直感というか、うまく言葉にできないのものなんですが、彼女たちがパーフェクトだろうと感じたんですね。彼女たちの眼だったり、ちょっと言ったことがキャラクターをよく理解しているなと感じさせたり。彼女たちはカメラを向けられても本当に自然体でいられるという、すごく奇妙な能力を持っていまして。私もそうですが、普通はカメラを向けられると自意識過剰になってしまう。でも、才能がある人たちはカメラの存在が気にならないというか、忘れているような感じすらします。
――3人はそれぞれの役とキャラクターが似ていたりするんですか?
ココ:漫画のキャラクターとは、まったくそのものと言えるくらい似ています。でも、ルーカスが脚色に際してちょっとアレンジを加えたので、映画ではまったく同じというわけではありません。
ムーディソン監督:ボボは漫画ではココという名前だったんですが、それでは私としてはちょっと居心地が悪かったので変えました。表現の自由というか、芸術家としての自由が欲しかったからなんですね。名前をココのままにしていたら、本当にココの自伝的作品になってしまったでしょう。現実に即してはいるけれども、まったくそのままではないものを作りたかったんです。
――この作品を作るときに一番難しかったのは何でしょう?
ムーディソン監督:編集ですね。編集では、「もうこれしかないんだよ」という事態に直面しなくてはいけない。撮影しているときはいくらでも撮るものを変更することはできますが、編集の時には撮ったページでやりくりしなくてはいけないということになります。それに、撮影しているときには「すごくいい出来だ」と思ったものも編集室に入ってみると、「そうでもないな」と感じることもあります。でも、そう思ってももう遅い。そんなわけで、編集作業中というのはいろいろと悩まされることが多いです。
――『ウィ・アー・ザ・ベスト!』は素晴らしい作品ですよ! 完成した作品については、ご自分でも「素晴らしい」と満足されますよね。
ムーディソン監督:必ずしもそうとも言えないんですね。私がスウェーデン人だからかもしれないですが、いつもどこかがっかりしている気がします。今まで撮ったすべての作品に、「これはパーフェクトだ」と満足したことはないんですね。でも、ディテールに関しては、「ここは好きだな」というところもあります。『ウィ・アー・ザ・ベスト!』で言えば、作品の雰囲気はすごく好きです。ただ、常に自分はまだアマチュアだなとか、まだまだ努力しなきゃいけないと思ったりとアップダウンがあるのも事実です。でも、今回はわりとハッピーですよ(笑)。
取材/構成:杉谷伸子(日本映画ペンクラブ)
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