第26回東京国際映画祭の最終日には、世界各国よりコンペティション部門に選ばれた15作品の中から、栄えある東京 サクラ グランプリを始め、各賞の受賞作品、および受賞者が発表されます。その審査を担当する5名の審査委員をお迎えして、記者会見が行われました。
日時・場所
10月17日(木) 19:30~ @TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン4
登壇者
チェン・カイコー(審査委員長)、ムン・ソリ、クリス・ブラウン、クリス・ワイツ、寺島しのぶ
Q:審査委員を務める感想と審査のポイントについて
クリス・ワイツさん: 国際審査委員に選ばれましたことを光栄に思います。コンペティションに選ばれた作品には、様々なジャンルの映画があります。その映画の中に求めているものは、やはりクリエイティビティ、そして観客としての私がインスピレーションを受けるということ。そして、その映画を見終った時に、自分がなぜ映画の世界をこんなに好きなのかを再確認させてくれることです。
ムン・ソリさん: 日本を再び訪れることができ、まるで久しぶりに友達に会ったような気分で、嬉しいです。いい映画をたくさん見ていろいろ勉強をし、たくさんの幸せを持ち帰られればと願っています。まずは、審査をするという気持ちよりも一人の観客として映画を楽しみ、たくさんのことを感じ取りたいと思います。そして、見終った後に、もっと踏み込んで様々なことを考え、色々なことを更に感じたいと思います。監督の考えや心はどのようなものなのかについて考え、そういった想いがどれくらい込められている作品なのか、どれくらい私がそれを感じられるのか・・・そういった作品に好感を得ることになるのだと考えています。
[女優として審査することについては] : 20年、30年と経験を積んでいるベテラン俳優の演技を見て感動する時もありますし、ある時は、初めて演技をした子役の演技やアマチュアの方の演技に感動することもあります。そういうことからも、やはり私がポイントとしたいのは、真心や誠意だと思います。演じている方の真心や誠意が伝わる時に、やはり一番感動します。その方を取り巻いている状況や環境やテクニックというよりも、真心が伝わった時に非常に大きな感動を覚えます。今回もそういった演技に出会えることを期待しています。
クリス・ブラウンさん: 今回は、ダブルの喜びがあります。ひとつは国際審査委員に選ばれたこと、もうひとつは、私の作品、コリン・ファースやニコール・キッドマンが出演する『レイルウェイ 運命の旅路』をご紹介できることです。是非この作品を皆様に見ていただきたいと願うと同時に、今回の映画祭で素晴らしい映画をたくさん見て、いい思い出として、また、勉強させていただきたいと思っています。
[審査ポイントとしては] : 映画を見た時にインスピレーションを得ること。特に今回は、私たちは素晴らしい晩餐会でトップレベルのシェフたちが腕をふるったご馳走を頂くことになると思います。そこからどのようなインスピレーションやときめきを感じられるのかを楽しみにしています。
寺島しのぶさん: 審査委員というとても重要な役を頂きまして、本当にプレッシャーを感じております。女優としてカーペットを歩いた方が、よほど気が楽だなと思いながら、私の一票が貴重な一票になると思って、楽しみながら、しっかりとコンペティションの映画を楽しみたいと思います。真っ暗なスクリーンをずっと見ていて、いつの間にかその黒いスクリーンに自分が引き込まれていく。そういう最後まで自分が、黒いスクリーンから映像にずっと吸い込まれていくというのが、自分の中で心に残ってしまう忘れられない映画になります。私はやはり人間なので、人間の多くの多面性が表現されている映画が好きです。
[女優として審査することについては] : 映画そのものを単純に見られる映画ももちろんあるんですけれど、自分は演技者なので、それぞれの役者さんの演技は、とても気になります。見ていて私がやった方がいいと思える映画は、たぶんいい映画ではないと・・・単純に、見てその役者さんに嫉妬する映画というのは、素敵な映画なのかなって・・・実際『オアシス』のムン・ソリさんを見た時、私はすごく嫉妬しました!
チェン・カイコーさん: 私たち審査委員よりも、メディアの皆さんはもっと大変であろうと思います。皆さんがお書きになった記事次第で、東京国際映画祭がより素晴らしい映画祭になるのだと思います。今、2014年にクランクインする映画の準備をしていますが、今回これを機会に東京に来まして、多くの若手監督の作品を見て勉強することのできる良いチャンスだと思っています。
映画とは、正に監督の鏡のようなものなのだと思います。映画がこういう状態であれば、監督もそういう状態であるといった具合に、です。時々、全く知らない監督であっても、その作品を通して新たな友人と知り合うことになると思います。一番見たい映画は、映画の中にたくさんの個人の経験、非常に独特な経験をすることができる映画です。個人の経験がなければ、世界の映画はおそらく進歩しないと思います。しかし、それと同時に、個人の経験は観客の皆さんの好感を得ることができなければならないと思います。今回このコンペティション部門で、そういった映画を見られることを期待しています。
若手の監督の皆さんが作品を作る際に、何のプレッシャーも感じていないように見受けます。私も30歳を過ぎたところで『黄色い大地』を撮りました。私は、北京電影学院監督科を卒業してすぐに何の経験もなく、映画に対する認識もなく、ただ勢いだけでその映画を作りました。いいことではありませんが、多くの作品を撮りますと成果を求められ、それが映画作りに対して負担となります。若手の監督にとっては勇気が何よりも大事なので、自分の内心のピュアなものを映画作品の中に取り入れて、観客の皆さんとそれを分かち合うことができればいいのだと思っています。