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2013.10.25
[イベントレポート]
「いつか子供が生まれたら、この名前をつけようかな」―10/22(火)コンペティション『ほとりの朔子』:Q&A

10/22(火)コンペティション『ほとりの朔子』上映後、深田晃司監督、二階堂ふみさん(女優)、杉野希妃さん(プロデューサー/女優)をお迎えしてQ&Aが行われました。
 

©2013 TIFF

 
矢田部PD:青春映画ということで、大学生でも高校生でもない浪人生という設定がユニークだと思うのですが、これはどのような形で思いつかれたのでしょうか?
 
深田晃司監督(深田監督):私は映画を撮る時に基本的にどういったものを撮ると面白いのかという事を考えていて、俳優さんにしてもなんにしても、次にどう動くかわからない。先の読めない不安定な状態のものがおもしろいと思っています。それは別に俳優さんの身体性ということに限らず、社会性の状態です。幸せな結婚生活より、結婚に至る過程やあるいは崩れかけている結婚生活の方が、映画としては魅力的な被写体であるように、なにか安定した大学に入った後とか、高校卒業前とかよりはその途中のまだどっちに転ぶかわからないという不安定な状態のほうが、それだけで魅力的な被写体になるんじゃないかと考え、浪人生という時代を選びました。
 
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©2013 TIFF

 
矢田部PD:なんて素晴らしい女優さんなんだろうと思いました。本当に朔子=二階堂さんという風に見えてしまうんですが、女優さんなのでどこまでが演技で、どこからが二階堂さんの「素」なのでしょうか?それとも完全にコントロールされているのでしょうか?
 
二階堂ふみさん(以下、二階堂さん):毎回少しは素が出ていると思います。今回は朔子を撮っていた期間がとても忙しい時期で、公開中の『地獄でなぜ悪い』と、大河ドラマの『平清盛』を同時に撮影していました。「いつか子供が生まれたら、この名前をつけようかな」とか、「トラウマになりそうだな」と思っていました。なので、深田監督の現場にリラックスしながら来ていたというか、ほとんど素に近い、やる気の無い時の私が出ていたと思います。息抜きに来たみたいな感じで、とても楽しかったです。でもやはり後から大きなスクリーンで自分のお芝居を見ると、いい意味でものすごく言葉に重みがないというか。すごく軽やかな言葉の流れが作品全体にあったので、新しいところを見つけることができたかなと思って、私はすごく感動しました。
 
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©2013 TIFF

 
矢田部PD:キーとなる役を演じた杉野さんは、同時にプロデューサーでもいらっしゃいます。現場での切り替えと言うのはどのようになさっているのか、伺えますか?
 
杉野希妃プロデューサー(以下、プロデューサー):『ほとりの朔子』に関してはそんなに大きな役でもなかったので、現場でそんなに大変なことはありませんでした。プロデューサーをしながら役者をやることを大変だとは思っていなくて、切り替えも全く意識せずに、一人の映画を作っている人間として携わっていました。泣いたり怒ったり笑ったりするのと同じ感覚で、時に演じて時にメーキング撮って、時には歌って、色んなことをするという感じで。それが相乗効果で面白くなればいいなと思いながらやっているだけなので、好きでやっています。
 
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©2013 TIFF

 
Q:冒頭のシーンがスタンダードサイズで、ビデオカメラで撮ったような昔風の印象でした。ビスタサイズとかシネマスコープサイズに慣れた私からすると新鮮な感じもあったし、ちょうど目の中に納まりやすいと思いました。画面の中に映っているもの全てを自分で隅々まで見られている感じがして、二階堂さんや杉野さんの姿が他の映画よりまして見えた気がしました。すごく良かったと思います。このサイズを選択された理由を教えてください。
 
監督:スクリーンサイズですが、これは私のわがままです。撮影前に撮影監督及びプロデューサーに相談して、4対3タンダードでやらせて欲しいとお願いしました。撮影時にはハイビジョンなので、16対9にひと手間かけて4対3に加工しています。なので、戸惑われた方もいらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。私がそれにこだわったのは、人を撮る時に収まりがいいサイズだと思っているからです。前回の『歓待』という作品を撮った時に、作品の出来に満足すると同時に4対3でやりたいという欲求が高まって、今回ちょっとわがままでスタンダードにさせてもらいました。
 
Q:反原発の集会のところと、鶴田さんと二階堂さんの浜辺のシーンには考えさせられました。『地獄でなぜ悪い』で二階堂さんが演じた魅力的で個性の強い役と、今回のようなわりと静かな役、どちらのほうが演じやすいですか?
 
二階堂さん:役については、どちらの要素もあるので楽しめると思います。
最近、血のり系が多かったから、そろそろ清純派の役が欲しいなとは思っています(笑)。
現場を作っているという感覚で現場に行くことが多いので、自分のお芝居がどうこうと考えることは最近少ないです。朔子はそういうことを考えるきっかけになったので。朔子を演じる時は本当にリラックスしていたのかなと思います。どちらもすごく楽しくて、どちらも割と難しかったりします。
 
Q:『ほとりの朔子』は青春ものかと思っていたのですが、色んなテーマが凝縮されていると思いました。監督は色んな要素がぶつかり合って混沌としている感じをむしろ楽しんでいるような印象を受けたのですが、そういった要素をどうやって1つの作品にまとめたのでしょうか?
 
監督:ありがとうございます。
まず、青春映画かどうかということについて。私もこの映画を人に説明するときは、面倒くさいので青春映画と言い切るようにしているのですが、私自身はあるジャンルの中に納まるものよりは、ジャンルの枠組みを超えていってしまうような作品が基本的に好きです。私の作品は盛り込み過ぎではないかとよく言われたりもするのですが、私が作品や脚本、演出を通している作業というのは、どちらかというと点を打っていくことだと思っています。色々なモチーフやテーマ、世界の事象を、点を打つように映画の中にちりばめていって、その点を結びつけていくのがお客さんの作業で、できるだけ多様に結びつけた結果の画がお客さんごとに違うものになるといいなと思って作っています。私が作ってきたほとんどの作品はそういう風になっているし、今後も比較的そういう作り方を続けていくんだろうなと。そのほうがお客さんに観てもらったときに、思いもしなかったようなリアクションが返ってきたりするので、作っていてもとても面白いです。
 
司会:ありがとうございます。では二階堂さん、最後にメッセージをいただけますか?
 
二階堂さん:口コミで広めていただいて、ぜひ多くの方に観ていただけたらいいなと思います。最近映画を観る方が少なくなっているのをすごく残念に思っているので、普段映画に触れない方もこの映画を観て、どんどん映画の魅力にはまってくれたら嬉しいです。また深田さんが映画を撮ることができたらぜひ現場に呼んでください。よろしくお願いします。ありがとうございました。
 
監督:本日はお越しいただきまして、本当にありがとうございました。この場を借りて、この作品をつくるために尽力してくださったスタッフ・キャストの皆さんの感謝の気持ちを述べたいと思います。
映画はお客さんに届けて完成するものだと思っていますので。来年1月からどんどん公開が始まりますので、ご家族や友人など周りの大切な人に「こういう映画があったよ」とぜひ広めてください。面白かったでもつまらなかったでも構いません。
あと二階堂さん、ぜひ次の作品があれば出演してください。撮れるよう頑張ります。
 
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©2013 TIFF

 

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