『夜とケイゴカー』の上映に続き、本作品の監督および出演者によるQ&Aが行なわれましたので、下記の通りご報告いたします。
■日時・場所: 10月21日(月) 20:25~ @TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン3
■登壇者: 市川悠輔(監督/脚本/編集)、板倉武志(俳優)、活野創(俳優)、冨永茜(女優)
ぴあフィルムフェスティバルアワード2013でグランプリを受賞した、『夜とケイゴカー』。本作を撮ろうと思ったきっかけについて聞かれた市川監督は、「田舎から出てきて東京で働いていますが、東京では車に乗る機会がなく電車通勤のため、車が恋しくなったのでガンガン走っている映画を撮りたかった」と話しました。また、インターネットで役者・スタッフの募集告知をかけたとのこと。
主演の板倉氏は、「新宿のカフェでお会いし、話を始めて10分くらいでお願いしますということになりました。ありがたいと思いましたが、一回も監督の前で演技をしていなかったので僕でいいんですか、という不安もありましたが、大丈夫でしょう、と言われました」と話すと、活野氏が、「募集を見つけて連絡をしたところ、会ってもいない段階で役が決まりました」と続け、冨永氏も「私もインターネットで見て応募したのですが、お会いしてすぐに決まりました。少しくらいセリフを読みましょうか?と言っても大丈夫です、と言われました」と全員が演技を見せることなく役が決まったエピソードを披露し、監督は、「キャラクターや雰囲気が合っていると思いました。直観です」とコメントしました。
普段から運がいいのか、との質問に対し市川監督は「普段は運がないですが、今までなかった分の運が映画づくりにきたな、という感じです」と答えていました。
市川悠輔監督
撮影現場では、監督曰く、一応台本はあったが、「アドリブで遊んで下さい、編集でなんとかするんで自由にやって下さい、と伝えました」。出演俳優のみなさんも、「自由にさせてもらって、アドリブが多くて楽しい現場だった」と撮影当時を思い出していました。
「細かいことはいいんだよ、というのを人生のモットーに生きている」という監督に対し、板倉氏が、「監督はのんびりしているけど、自分の言いたいことをしっかり選んで言う人です。現場でも演技に対して細かいことは言わないですが、自分のヴィジョンがしっかりある人」と言うと、活野氏も、「撮影現場では随所に監督のこだわりを感じました」と同意し、冨永氏は、「初めは、簡単に会っただけでキャスティングするし、大丈夫かな?と少し心配もしていたんですが、芯の強さとかやさしさなど、会えば会うほど監督の魅力が伝わってきました」と俳優陣から見た監督像を語ってくださいました。
左から、板倉武志さん、活野創さん、冨永茜さん
本作の中でカメラの影が映る場面は、監督が一番こだわったシーン。「状況設定としては、ヤンキーにボコボコに殴られたケイゴくんが死ぬくらいの致命的なダメージを受け、ぎりぎりのところで蘇ったときに、役のケイゴくんそして活野創という本人の記憶が曖昧になって、カメラが見えてしまった、という設定です。この映画ではワンカットワンカットにこだわりましたが、一番やりたかったのはこのカメラの影のシーンです」と市川監督。ケイゴがフレームから切れるシーンについても同様の狙いがあったとのことで、「あのシーンではカメラで撮っている、フィクションである、ということを訴えています。カメラの重要性や、映画の構造的なところをあぶりだし、現実にない世界と撮影をしている現実、その間にある『何か』を出せればと考えていました。結果的にはカメラの影のシーン、そしてフレームのシーンで映画の『危うさ・儚さ』が強調されたんじゃないかな、と自分では思っています」。
製作費について聞かれた監督は、「およそ100万円ちょっとです。本来はそんなにかからないのですが、製作費を抑える努力もしなかったのでどんどん膨れ上がりました。費用は自分が仕事でコツコツ貯めた貯金を使いました。これで映画を作るのは最後だろうと思い、記念だという気持ちで作りましたが、ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを取って100万円をいただいたので、よかったな、もう一本撮れるんじゃないかな、と思っています」と次回作についての抱負も延べるとともに、本作については、「もっと多くの人の目に触れるようにしていければと思っています」とアピールしていました。
日本映画スプラッシュ
PFFグランプリ受賞作品上映
『夜とケイゴカー』