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2013.10.23
[インタビュー]
「ハートウォーミングな脚本を書き出してみたら、もう2ページ目で死神が出ていた(笑)」―日本映画スプラッシュ『死神ターニャ』 塩出太志(監督/脚本/編集/撮影)、星野祐樹(俳優):公式インタビュー

死神ターニャ

©2013 TIFF

この映画に登場する死神のひとりは、ハンバーグが食べたくて人間になりたいと思う。しかし、本当に人間になるためには、決められた時間以内に涙を流さなくてはならないのだ。初長編を引っさげて、 “新感覚エンタテインメント”と謳い、コミカルでハイテンポな作品を生み出した塩出監督に、作品に対する思いを聞いた。

 
———これまでに短編は多く作られていますが、この『死神ターニャ』は初の長編ですね。撮られてみていかがでしたか?
 
塩出太志監督(以下、塩出監督):短編と長編は、まったくの別物だと思いました。長編になるとドラマの部分、主に葛藤を多く占めるものを描かないとダメじゃないですか。今の僕にはその実力はないので、短編をつなぎ合わせるというか、展開を多くしたほうがいい。実は、葛藤の部分があまり好きじゃないんです。観客は映画を観ていたら、この部分が葛藤だと分かってしまう。それはやめようと思いました。(登場人物が)悩むよりもどんどんいくものにしようということで、こんな感じになりました。
 
———この映画は発想が奇抜で、それが素晴らしいと思ったのですが、アイデアはどこから出てきたのでしょうか。
 
塩出監督:最初は、僕が最も苦手とする心温まる話を書きたいと思ったのですが(笑)。
 
―——ハートウォーミングな?
 
塩出監督:そうそう、ハートウォーミングを書いてみようと、ラストも決めずに書き始めたんですね。まあ、とりあえず家族を出して。でも、もう2ページ目には死神が出てきていました(笑)。ハートウォーミング路線は、やはりダメなんだとあきらめました。
死神ターニャ

©2013 TIFF

 
―——監督の中で、死神のモチーフはずっとあったのですか?
 
塩出監督:家族を出して書き進めるうち、いや、「こいつらが死ねばいいんじゃないか」と思い、じゃあ、死ぬとなると死神だと思って登場させました。
 
―——その死神が人になりたいという話ですよね。死神を出したときから、そうした展開を思っていたのでしょうか?
 
塩出監督:お話を面白くするには制約が必要です。特にファンタジーにはそうだと思います。そこで考えたのが、ひとつは人間になるということと、もうひとつ、時間内に涙を流すという設定です。その制約でうまく展開できたらいいなと思いました。
 
———主人公たちのセリフの掛け合いや、間が面白くて、ツボにハマる個所が多々ありました(笑)。俳優たちに任せたところも?
 
塩出監督:間は、僕の中では結構決めうちでした。たくさんカット割っているじゃないですか。だから間は調節できます。でも、引きのところは気持ち悪い間にならないように気をつけてやっていました。
 
―——撮影も4人のうちの1人としてやっていらっしゃいます。短編時代からそういう撮り方だったのでしょうか。
 
塩出監督:いや、ただカメラマンがなかなかいないということです。それは、やっぱりお金がかかってしまうし、かかると撮影も短くなるのがすごく嫌じゃないですか。だから自分が回したほうが早いので、それでやったという感じですね。
 
―——どういうきっかけで映画監督になろうと思われたのですか?
 
塩出監督:きっかけは邦画を観ていて、これぐらいなら俺のほうが撮れるぜって(笑)。20歳くらいの時でした。映画監督になると決めて、兵庫県から東京に来て初めに行ったところがイメージフォーラムでした。「映画は呼吸だ」とか、初めは「何、言っているんだ?」と思っていたんです。でも、学んでいくうちに、「ああ、こういうのが呼吸なのかな」って。それは、やはりカットとカットの繋ぎとか、そういう流れでと決めるのが、呼吸なんじゃないかなと思いました。
死神ターニャ

©2013 TIFF

 
―——死神役の星野さんは、この映画をご覧になっていかがでしたか?
 
星野:出来上がりを見て泣きそうになりました。脚本を読んだときには、こういう風になるとは思わなかったんです。死神を通して人が生きるということに対して、いろんな捉え方があると思うのですが、そこがちゃんと描かれているから今までと違う感じで、「おおっ」みたいな。
 
塩出監督:長いから、前とは違うよね(笑)。
 
―——いや、実はセリフがハートウォーミングになっていますよね。
 
塩出監督:そう言って頂ければうれしいです。
 
星野:それで、観客が日常を見直そうとか思ってくれたらうれしいですよね。
 
―——これからどんな映画を撮っていきたいと思っていらっしゃいますか?
 
塩出監督:ヒットする映画を撮りたいですね(笑)。多分、王道はできないと思うので、コミカルな、どこかこねくり回した脚本で。今の観客は目が肥えているじゃないですか。映画をたくさん観ているし、先を想像する能力があると思うので、(自分は)その上をいかなくてはと、そんな考え方が一番あります。
 
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死神ターニャ

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