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2013.10.21
[イベントレポート]
「歌詞が変われば脚本を直し、脚本を直したら今度は歌詞を変え・・・」-10/18(金)日本映画スプラッシュ部門『自分の事ばかりで情けなくなるよ』Q&A

松居大悟監督(『アフロ田中』『男子高校生の日常』)が、ロックバンド“クリープハイプ”の尾崎世界観の原案を基に手掛ける異色の音楽映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』。
これまで同コンビが制作してきた「イノチミジカシコイセヨオトメ」「あたしの窓」「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」に新作「傷つける」が加わり、これまでの物語すべてが一大群像劇として完結!ワールド・プレミア上映終了後のQ&Aでは、松居大悟監督、横田直樹プロデューサーに加えて主演の池松壮亮が登場し、注目の作品の制作過程などを語った。
 
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©2013 TIFF

 
矢田部PD:この4つの作品の書いた順番、あるいは撮った順番についてお聞かせいただけますか?
 
松居大悟監督(以下、松居監督):割と順番通りなんですが、2個目と3個目だけ違います。最初にオタクの少年のシーンがあってその後にOLの話を撮影するという順番は一緒です。でもOLの話の後に池松君が演じる言葉の話がくると少し重たくなるのでミュージックビデオを入れて姿勢を切り替えてほしいなと思い、後半の2つを変更しました。物語性的にバトンが繋がる感じがあったのでそのように繋ぎました。
 
Q:4部構成でテイストや描き方、カラーリングが全く違ったと思うのですが、それぞれ参考になった作品はありますか?
また、主要の男性キャスト3名が今までのイメージとは違った意外性のある役どころだったと思うのですが、キャスティングの決め手になったことはなんですか?

 
松居監督:参考にしたものは特にありません。この曲をどう映像化するかということを1番に考えていました。物語性のある曲なので、いかに音楽に勝つ映像を作るか、歌に負けない画を撮るかというためにどうしようかと考えました。ですので何かを目指したわけではないですね。
キャスティングに関しては、予算をかけないで短編映画を撮ると決めていたので、皆さんの愛情のみでやってもらうといった感じでした。なのでキャストの皆さんもクリープハイプのバンドの音楽が好きだというところありきで決めていきました。そこから数珠つなぎで役者を紹介してもらったので、一般的なイメージは考えずその人自身と触れ合うことから役のイメージを作り上げていったので、そういう意味でギャップがあったのかもしれませんね。
 
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©2013 Victor Entertainment,inc.

 
横田直樹プロデューサー(以下、横田プロデューサー):大東(駿介)さんは世の中の爽やかなパプリックイメージに対して、本人のご意向もあって進んでこういう役を喜んでやったみたいとをおっしゃっていましたよね。
 
松居監督:そうなんですよ。本人がいないので言っていいのか分からないんですけど、僕は本当はそういう人間なんだ、もっと破滅的な男なんだ、それを世の中に知らしめたいと。

(場内爆笑)
矢田部PD:監督は大東さんにもっとやれ、またはもっと控えめになどの演技指導はあったのですか?

 
松居監督:本人が本当に前のめりで、メガネかけていいですか?(メガネは)度がないとだめだ!とこだわりが強かったので、僕は全体像を調整する方に回ろうと思いました。僕よりもツダ(大東さん演じる役名)への愛が間違いなくありましたね。
 

矢田部PD:池松さんは役作りに関しては監督とかなり話し込まれたんでしょうか?
 
池松壮亮さん(以下、池松さん):僕は全然話していなくて、(昨年)舞台でやった100年前のハンガリー戯曲がほとんど(映画と)内容が同じなんです。それの設定を少し変えて現代版にしました。
松居さんが舞台で後悔したこと、やりきれなかったことを映画としてやろうとして始まっているので、改めて話すことは特になく、もうやるだけだなぁという感じでした。
 
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©2013 TIFF

 
矢田部PD:では俳優さんのことをお伺いしたので、女優さんの話をお伺いしてもよろしいでしょうか?
 
松居監督:スタートはみんなクリープハイプが好きだというところで・・・・あとはいい人そうだなぁとか(笑)。怖そうな人だと言いたいこと言えなかったり萎縮してしまったりしてしまうので、優しい人がいいなぁと思っていました。
 
矢田部PD:山田真歩さんはどうやってキャスティングされたんですか?
 
松居監督:もうこの話をやろうと思った時に山田真歩しかいないなと思いました。それはもちろん一緒に舞台をやってたということもあるんですけど。山田がもともとOLの経験をしていたので、本当に嫌な辛いことを経験して女優として帰ってきたという経歴もあったので。山田真歩しか考えられなかったくらいです。
キャスティングは今まで出会った人など本当に身近なところなんですよね。この映画自体もそうなんですけど、自分の身の回り5センチとか10センチくらいの範囲の話をできるだけ丁寧に作るという意識で、自分の身の周りの人から数珠つなぎで、どんどん大きな仲間たちを増やしていこうという気持ちですね。
 
横田プロデューサー:山田真歩さんの初めのバスシーンは本人のOL時代の思い出なんです。
 
松居監督:そうです。山田本人に何が1番辛かった?と聞いたら、もう本当何も覚えてないと答えてました。(山田本人は)嫌なことはどんどん忘れるみたいです。
ただ、「バスで本当嫌だなって思いながら窓の外見てて流れる景色を見ているのは本当忘れられない」と言ったのを聞いてそこからアイディアが生まれました。
 
矢田部PD:「会社なくなんないかなぁ」みたいなことをカラオケで言いますけど、それもリアルな彼女のセリフなんですか?
 
松居監督:いや、あれはどうだったかな。あれは僕がああいうこと言う人が好きだなぁっていうだけで(笑)。
 
matsui

©2013 TIFF

 
Q:監督に質問なのですが、プラスの方向でもマイナスの方向でもこれは計算外だったなと思うことがあればお聞かせ頂いてよろしいでしょうか?
 
松居監督:計算外というと、ピンサロ嬢の話はミュージックビデオ1本プラスアルファくらいの予算でむりやり短編映画を撮るという話で動き出していたので、本当は2日で撮りきらないといけなかったんですけど撮りきれなくて・・・・最後少しだけこぼれた(撮りきれなかった)んですよね。
最後のラストシーンでOLがナース姿で走り回るところも計算外でお金出せず、少しずつスタッフが減っていったんです。最初は20人~30人で撮っていたんですけど、最後の方は照明部にまでお金出せませんすみませんと断って、最終的にカメラマンとプロデューサと僕と彼女だけっていう4人でナースで走り回るシーンを撮りましたね。なんだかAVの撮影みたいになっちゃって(笑)。あれは計算外でしたね。
 
矢田部PD:一緒にやっていながらも尾崎さんの音楽に負けないようにしなければならないっていう監督の心構えって非常に難しかったと思うんですけれども。
 
松居監督:そうですね。僕も、もともと単純なファンから始まってるので。
でも尾崎くんは映像の力を信じていて、映像によってまた音楽のこと好きになってもらえると思っているからこそ僕が音楽に寄り添って映像を作ったらすごく弱いものになるのでないかと思って・・・。映画の最後に主題歌として提供される形、もしくは音楽にミュージックビデオ映像をのせる形といった片一方の方向というものはあると思うんですけど、歌詞が変われば脚本を直して、脚本を書き直したら今度は歌詞を変えたり音楽ができて映像ができて、双方向で音楽と映像が寄り添っていったら映画を観た時に歌がすっと入ってくるような気がしたのでそういう作品があってもいいんじゃないかなと思いました。
 
横田プロデューサー:尾崎君と監督がライバル関係なんですよね。音楽に負けないように映像を作るって、尾崎君もすごい映像ができると喜ぶんですけど心配になるんですよね、音楽が負けちゃうんじゃないかって。嫉妬しちゃうんですよ。
お客さんの反応が、「映像もすごくよかったです」ってなると、音楽も負けないように作ろうという次に向けてのパワーになってるみたいで。結果的に音楽と映画がすごくいい相乗効果でひとつの新しい音楽映画みたいなのを切り開いてるというのは、こちらの冥利に尽きます。
 
矢田部PD:PVではなく映画として、これだけはやってはいけないとして自分に課したものってありますか?音楽映画として、ある意味PVではないんだと。
 
松居監督:言ってること重複してしまうんですけど、音楽に合わせようとして物語を作ってはいけない気がしていて。音楽がそれ自体で作品になっていて、それに絵を載せるだけなんですぐまとまってしまうんです。でもそうやって楽してしまったら、何も痕跡を残せないので音楽に勝とうという気持ちを常に持っています。
 
矢田部PD:10月26日からユーロスペース他全国順次公開となりますので、それに向けて監督や池松さんから一言いただけますでしょうか?
 
池松さん:今日は本当にありがとうございます。尾崎さんが歌ってることを松居さんが映像にして、松居さんが映像でやりたいことを尾崎さんが歌うお互いの関係があったからこそできた映画だと思います。僕は尾崎さんの歌う世界と、松居さんの映像にする世界が自分の延長線上にあるからこそすごくリアルで信じられるので僕はすごく大好きな映画です。公開は少し先ですが、どんどん広がっていってほしいなと思います。
 
横田プロデューサー:先ほども言いましたが、音楽と映画がここまで愛し合ってできた映画だと思うので、新しい音楽映画のきっかけとしてクリープハイプも他のアーティストさんもこういう音楽と映像を新しく融合したものをどんどんできたらいいと思います。来週末から渋谷を皮切りに公開が始まりますが、みなさんTwitterやFacebookでどんどんつぶやいて友達をどんどん誘って見に来てください。
 
松居監督:僕が音楽を聴いて救われたのと同じように、この映画を観た人が救われたらいいなと思います。描く必要ないくらい小さな話なのですが、そういうことでみんなくよくよ悩んでたりするんですよね。歩いていてすれ違う人はこんなことで悩んでるんじゃないか、電車の中で疲れて寝てる人は色々と大変だったんだろうなぁと思うことでそういった些細なことで世界がすごく素敵に見えるんじゃないかと思ってます。この映画を観た後帰りにふとすれ違った人のことを思ってくれたらすごく嬉しいです。
 

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©2013 Victor Entertainment,inc.
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