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2013.10.20
[イベントレポート]
「日本の映画は役者さんが怒鳴っているので、普通の会話か喧嘩が始まるのかわからないですね」-10/18(金)コンペティション『ルールを曲げろ』:Q&A

10/18(金)コンペティション部門『ルールを曲げろ』のQ&Aが上映後行われました。
司会は東京国際映画祭 矢田部吉彦プログラミング・ディレクターです。
 
日時・場所:
10/18(金) 21:15- @TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン7
 
ルールを曲げろ

©2013 TIFF

登壇者:
ベーナム・ベーザディ(監督)、ネダ・ジェブライーリ(女優)
 
矢田部PD:いろんな楽しみ方ができる作品だと思うのですが、青年と親の世代との対立を描こうと思ったきっかけはなんですか?
 
ベーナム・ベーザディ監督(以下、監督):若い世代は現在ネットを通じてつながりを強くして新しい世界を作っていて、親の世代よりどんどん前に進んでいるので親は今の世代の気持ちをよく理解しないとこのギャップはどんどん深くなってしまうのです。もうひとつの問題は、若者が現在使っている言葉を親は理解できないのですね。流行の言葉を使っていってしまうので普段の会話でも理解できないのです。ですから若者は親と離れたかたちで生活している傾向にあると思います。
 
Q:この映画も静かにディスカッションをしていますが、それは監督の演出なのかそれともイランという国でのリアリズムだったのでしょうか?
 
監督:イランの文化によるディスカッションだと思います。私たちの言葉遣いや文化の中ではあまり大きな声やアグレッシブなディスカッションはしていないかもしれません。逆に私たちが日本の映画を観ると役者さんが怒鳴っているので、これは普通の会話なのかそれともこれから喧嘩が始まるのかわからないですね(場内爆笑)。私たちはそう思っているのでそれはやはりその国の文化や言葉による監督のやり方ですね。もうひとつとしては、イラン映画はとてもドキュメンタリータッチが多くてリアリズムに近いものを撮ろうとしているのです。実際私たちの生活の中で静かに話しますし、映画の中にもありましたが、時々怒るときもありますがまた静かに戻ります。それは普段の私たちの生活にもっとも近い台詞のやり取りやディスカッションの仕方なのです。
 
矢田部PD:とても演技が自然に見えましたのですが、若者サイドから若者の言葉遣いなり文化を監督に伝えることはあったのでしょうか?
 
ネダ・ジェブライーリ(以下、ネダさん):もちろんスクリプトはしっかり書かれてあってセリフは決まっていたんですけれども、細かいところは結構アイディアを出していました。イランの若者だけではなく全世界の若い世代が皆フェイスブックやツイッターを使っていて、同じような言葉を使っているかもしれないんですけれど、私たちは自分たちのアイディアを監督に出して、監督は納得したらそれを使っていました。アイディアは皆で話し合った上で最もリアルに演じるためにはどうしたらいいかについて話し合い、それから監督が納得した上で演じました。
 
Q:「親と子の確執」「親と子世代の価値観の相違」というのはとても普遍的なテーマであって、その中で価値観の違いの原因として、イラン特有のものというのはどういうふうにお考えになっていますか?
 
監督:一つは「忘れてはいけない」ということがあります。イランにはイスラム革命がありました。今の親の世代というのは革命を起こした世代なんですね。子どもたちは革命後に生まれてきている世代です。ですから革命をどう起こしたのか、どういう考えで革命に参加したのかという親の考え方、政治的でも、宗教的でも、文化的でも、革命後に生まれてきた今の若い世代とは全く違うんです。例えば、親の世代は8年前からフェイスブックはいらないと決めたんです。その規則を決めたのは親の世代になるんですけれども。でも今のイランの若い人たちは、フェイスブックを使って世界と同じ言語でお互いにしゃべっていますね。
 
Q:監督自身はお父さん世代ですが、なぜ劇中で若い人たちが頑張って劇団を成功させようとしているのに邪魔してしまうというお父さんを悪役に仕立てあげるような結末にしたんですか?

監督:人は誰しも悪い心を持っているわけではないんです。親の世代にも色々規則やルールがあって、仕方なく若者の邪魔をしたりすることがあるんです。基本は心は悪くないと思います。私たちの社会には色々な決まりやルールがありますが、その決まりをどのように使っているのかまたは理解しているのかによって色々問題が起きたりしているんです。
 
Q:劇中のお父さんと娘とのコミュニケーションや現場でのコミュニケーションがうまくいかなかったこともあると思いますが、人と人とがわかり合うアドバイスがあればぜひ教えてください。
 
監督:アドバイスを言うよりは、次の映画を作ってその中で自分のアドバイスを描いたらわかりやすいかもしれません。
正直自分はアドバイスをする立場ではないと思うんですけど、コミュニケーションのとり方というものはとても個人的な問題でありまして、親の世代でも若者の世代でも、権力を持っている人も一般の人も、どうやってコミュニケーションをとるべきかは自分のやり方や考えがあるのでそれは私からは何とも言えません。
 
矢田部PD:ネダさん、この映画で一番つらかった事はなんですか?
 
ネダ:最初誰の事も知らなかったのでみんなと自分をあわせる事が一番大変だったかなと思います。でも稽古や本読みを通してみんなと仲良くなれました。実際撮影中や合間もみんな一体になって仲良くできたので、この映画を演じきることができました。この映画は自分の一番最初の映画、デビュー作なので初めての仕事で大変でしたしすごく緊張していたのですが監督の手助けもあり、みなさんに助けられました。今は映画の撮影が終わった後もみんな仲良く、親友と呼べる仲間もできたのでとてもいい仕事ができたのではないかなと思います。
 
矢田部PD:最後に監督から一言お願いします。
 
監督:日本に来てたった二日しか経っていないのですが、この二日間日本で不思議なものをたくさん見て経験してとても日本のことを好きになりました。映画祭が終わったらすぐ日本に戻ってきて日本で映画を撮りたいくらいです。一番驚いてるのはもうすぐ電車が終わる時間なのにかかわらず、それでもみなさん映画を観た後も残って私の話を聞いていただいて本当に心から感謝しています。本当に日本のことが好きになりました。
 
コンペティション部門
ルールを曲げろ
Bending the Rules
監督/脚本/編集/製作/原作/出資:
ベーナム・ベーザディ
キャスト:
アミル・ジャファリ
アシュカン・ハティビ
バハラン・バニ・アハマディ
ネダ・ジェブライーリ
マルティン・シャムンプル
ロシャナーク・ゲラミ

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